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□儚げに君は
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便利な世の中だと思う。近くに居なくてもこうやって愛しい彼の声を耳元で聞ける、なんて。贅沢だとは思うが要らないものでもないな、と最近になって持たされた電子機器に耳を傾ける。

「ねぇ、聞いてるのかい?」
「クフフ…聞いていますよ。今日は遅くなるんですね。」
「うん、だから先寝てて。どうせ僕の所にいるんでしょ。草壁にでも言って布団ひかせていいから。」

バレていましたか、と呟けば当たり前だよと返された。一緒に床につけないのは残念だが、任務なら仕方ない。

「気をつけて下さいね。」
「僕はそんなヘマしまいよ。」

恭弥がむ、とした気がする。

「念のためです。」
「いらない。」

プツリと切れた携帯はツ−とした音しか聞こえない。これだから嫌なんです。良いものだな、と思った電子機器も声が聞こえなくなった後のこのなんとも言えない寂しさは癒せない。やはり電子機器は便利じゃないですね。ん?と、突如響く電子機器にビックリした。確かこの響き方はメ−ルだったかなと朧気な記憶を辿る。

「……。」

前言撤回。やはり便利なものですね。開いたメ−ルは唯一登録されているアドレスから
で用件しか記されていないそれは絵文字もなければ勿論顔文字もない。けれど幸せな気持ちになれた。

「明日は骸の家に行くから」


◇◆◇◆◇◆


打った文章が送信されたのを確認してそれをポケットに入れた。素っ気なかったかな、と不安になり顔文字くらい着けば良かったと後悔した。何度目だろう、しかし何度後悔しても恥ずかしさが勝ちメ−ルはいつもあんなのだ。第一、顔文字の打ち方すら知らないのだから雲雀にはどうすることも出来ない。

「時間かな……。」

時計を見れば午後7時を指していた。暫く歩い
たあと目当ての店には入れば直ぐさま気前の良いオ−ナ−が出てくる。人を寄せ付けないよう予め言っておいたせいかキラキラ輝く広い店内は従業員も含め勿論客さえも居なかった。

「うん、頼んでいたものを出してくれるかい?」


◇◆◇◆◇◆


遅いですね、と布団に潜りながら思った。畳を踏む音がして帰ってきたと分かったのだが時計はもう11時を回っていただろう。任務にしても酷く中途半端な時間だ。しかしながら、起きるタイミング失ってしまいこのまま狸寝入りをしても良いものか悩む。

「骸……。」



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