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□似てたらいいな
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耳を疑うとはこのことか。あんまりにも小さい頃から銃声や何やらを聞いていたから耳がおかしくなってしまったのでは。それとも彼のいつものあれだろうか。どちらにせよおかしい。今彼が言ったことはおかしい優しくお腹を撫でている彼に、確認のためもう一度聞いてみる。


「…恭弥、もう一回お願いします」

「うん、ふふ、あのね、赤ちゃんできたよ」


やっぱり、


「何回でも言ってあげるよ、僕らの赤ちゃんができたんだよ骸」


やっぱり僕の耳は正常だ。
そんなことって、いやいやあっていいわけがない。いくら僕らが恋人同士で、何回も愛を育んだからって、彼に子が宿るわけない。そう、彼、なのだから。



「わあ、くふ−、おもしろいですね、でもエイプリルフ−ルは…」

さりげなく冗談を交わそうと思ってそう言ったら、彼はみるみるうちに不機嫌になっていった。
そしてがつんとトンファ−で一発。痛いです。



「冗談なんかじゃないよ、なに、嬉しくないわけ?!」



鋭く僕を睨みながら愛用の武器を構えて迫ってくる彼。仮に妊娠してるんだったら暴れちゃいけないのでは。

「ちょ、恭弥、暴れちゃだめです」

「殴るくらい平気だよ、素直に喜ばない骸が悪い」

「違います、そりゃ嬉しいですが君は…」

「君は、なに」

「い、いえ、あの、すごくこわいです恭弥」

「なにが?」

「きょ……あ、赤ちゃん産むことによって君の身体に負担がかからないかな−とか!」

「!」

「……?」



途端彼はトンファ−をおろして勢いよく僕に抱きついてくる。
いつも思うことだけれど、なに考えているのかわかりません…



「大丈夫ぼくつよいし。僕のこと心配してくれてたからすぐに喜べなかったんだね、ありがとう」

「あ、は、はい、…」

「ぜったい強い子産むから。だって君と僕の子だもん。最強に育てあげようね」

「く、ふ、そうですよね、最強にしてあげましょうね」


僕に跨がって首に腕をまわしながら話す彼はものすごく…それはそれはかわいくて。
なに考えているのかわからなくっても、こういうかわいいところが大好きなんですよね。ギャップって大事です。


猫みたいに頭を擦りつけてくる彼の腰に手をまわしつつ、やっぱり気になることを聞いてみる。


「でもなんで赤ちゃんできたってわかったんですか?」


まさか妊娠検査薬を使ったとも思えない。というかどこから調達したというのだ彼が一人薬局で検査薬を買う姿を想像すると笑えるものがある。

「こないだの火曜日にね、なんだかお腹があったかい気がしたの。放っておいたら今度はすごい吐き気がして、グレ−プフル−ツとか無性に食べたくなったりしたの。こないだ保健の教科書で読んだばっかりだったら、すぐに妊娠したってわかった」

「はあ…なるほど」

「ね、ほら、触ってみて、お腹あったかいでしょ?」



得意げに僕の手を先程まで自分が撫でていたところへ誘導する。……あったかい、んですかね………?



「男の子がいいね、女の子じゃそこまで強くなれないだろうし、万が一骸に惚れられたら困るもんね」

「自分の父親に惚れはしないでしょう」

「僕と同じ遺伝子が流れているんだから有り得るはなしだよ」

「くふふ、でも僕の遺伝子もあるじゃないですか」

「あと、骸はとうぶん煙草禁止だよ」

「へ?」

「赤ちゃんに悪いでしょ」



相変わらず僕に擦り寄りながら目を細める彼は、ほんとにほんとにしあわせそう。想像妊娠。
きっと彼がこの事実を知ったら傷つくだろう。それでも、そこまで僕との赤ちゃんを望んでくれた彼がいとおしい。医師から妊娠を否定されるのが一番いいらしいけれど、あまり話を膨らまさせないようにして、あともうすこしだけ彼に合わせてあげよう。


もうちょっとだけ、この幸せを味わっていたいんです。



骸に似てたらいいな
(そしたらぜったいかっこよくて強い子になるもん)

 

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