・剣と風の色・
□【刃の時】
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「妹」
もの心ついた時には共にいた…。
母の温もりすら思い出せないのに。
あの時の、
妹の遠い昔の記憶が私の中で蘇る。
二人でいつも手を繋ぎ、共に遊び笑っていた。
でも突然にその時がやって来た。
斎宮にあがるその時が…「妹を返して」の言葉しか頭に浮かばない…。
時が経ち二人は大人になった。
違う道を歩き、違う働きについていた。
私は妹と出逢い話せれば、それだけで幸福だったのに…
なのに何故?
私達を忘れてくれぬのか…。
権力争いなど興味などありはしなかったのに…。
「許せぬ権力の亡者共」
あの者は私に何も語らなかった。
幼少「妹は俺が守る」と誓った筈なのに…。
あの者は知ってたのであろう。
私に知れれば多くの争いが起き多くの血が流れる事を、
そして私も死ぬ事を。
可哀相な妹よ。
優しい妹よ。
愛しい妹よ。