・剣と風の色・

□【刃の時】
2ページ/6ページ

「妹」



もの心ついた時には共にいた…。
母の温もりすら思い出せないのに。

あの時の、
妹の遠い昔の記憶が私の中で蘇る。
二人でいつも手を繋ぎ、共に遊び笑っていた。

でも突然にその時がやって来た。
斎宮にあがるその時が…「妹を返して」の言葉しか頭に浮かばない…。

時が経ち二人は大人になった。
違う道を歩き、違う働きについていた。
私は妹と出逢い話せれば、それだけで幸福だったのに…
なのに何故?
私達を忘れてくれぬのか…。
権力争いなど興味などありはしなかったのに…。
「許せぬ権力の亡者共」

あの者は私に何も語らなかった。
幼少「妹は俺が守る」と誓った筈なのに…。

あの者は知ってたのであろう。
私に知れれば多くの争いが起き多くの血が流れる事を、

そして私も死ぬ事を。


可哀相な妹よ。
優しい妹よ。
愛しい妹よ。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ