◇リボーン◇
□君が分からない
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ねぇ、君はなんなの?
出逢ってから有に十年は経過してるっていうのに、未だに君のことなんて全然分からない。
僕にしては珍しく飽きもせず傍にいるっていうのに、まったくもって君のことなんて分からないよ。
……分からないんだ、君の涙の理由さえ。
君が分からない
その日雲雀は、気まぐれでイタリア本部の屋敷に足を踏み入れた。
そんなに長いこと来ていなかったわけではない。
ただ、そう。
あの子からの頼まれ事の報告くらいしてやってもいいと。
その程度の、気まぐれ。
別に逢いたかったわけじゃない。
『おかえりなさい、雲雀さん』
居着くわけではない雲雀にたいし、綱吉はいつだって「いらっしゃい」ではなく、「おかえりなさい」という。
それさえも不愉快で、でも嫌ではなくて。
こんな気持ちにさせる唯一人の人物に、今日もこの胸の内を掻き乱される。
そうしてまた、同じ問答を繰り返す。
(君はなんなの…)
答えなんて、見付からないのに。
だけど。
『雲雀さん、報告はあとでいいので一緒に夕食でもどうですか?』
たまにみせる、“縋る表情”に。
『……別にいいけど?』
甘やかさずには、いられない。
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『相変わらず、金魚のふんみたいに一緒にいるんだね』
夕食の席に着く前、豪奢な扉の前で主を待つ獄寺隼人に珍しく声をかけた。
昔はキャンキャン吠えてきたけれど、年月が経つにつれそれはなくなった。
ただ、射るような目でこちらを一瞥してくるだけ。
(……つまらないな)
獄寺隼人は、昔のほうが面白かった。
『夕食にくるのか』
ややあって、獄寺は視線を真正面から微動だにしないまま雲雀に問い掛けてきた。
『行ったら悪い?君のご主人様に呼ばれて行くんだけど』
『珍しいな。お前でもあの方のご命令に従うことなんてあるのか』
『命令?ただのお願いの間違いでしょ』
雲雀がなんとはなしにそう返すと、獄寺の瞳がはじめて剣呑に光り、雲雀を睨めつける。
『“お願い”は聞くのか』
その言葉が雲雀には、「お前もあの方が好きなのか」に聞こえた。
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