◇リボーン◇

□謀略と策士(前編)
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その人のことが、好きだった。

いつから好きだったのかは分からない。
ただ、その人のさらさらの金色の髪も、自分を呼ぶ低い声も、鞭を自由自在に操る美しい手も。
なにもかもが好きで。

だから。

『好きです』

そう、告白したのだ。
だけど。

『ごめんな、ツナ』

ふられるのは覚悟のうちだった。
でも、そんな悲しそうな顔で言われるとは思わなくて。
それが一番、辛かった。


















*******

高校は、マフィア関係の子が多く通う学校に入学した。
そこであの人が講師をしていたのも理由の一つであるし、卒業生だったのもまた理由だ。

ボンゴレ十代目、というだけで受験は免除された。
正直有り難かったが、複雑な気がしたのも事実だ。

本当は一人で入学する気だったのだが、どこで聞いたのか守護者全員が同じ高校にいて驚いた。
(ランボは小等部だけど)
今になって思えば、全員いてくれて良かったのかもしれない。
ここではいじめられることなんてないけど、逆に寄ってくることもない。
“ボンゴレ”の名を恐れて。


『十代目!』

ふ、と呼ばれて振り返れば、銀色の髪。
あの人とは違う色の、同じさらさらの髪。
この学校で唯一、同じクラスにいる綱吉の守護者。

『獄寺くん…』
『すいません、購買めちゃ混んでまして』

そのままさり気なく、綱吉を人気のないテラスへと誘う。
獄寺はいつからか、とても綱吉の気持ちに敏感になった。
言わなくてもどうして欲しいのか分かるらしく、こうして優しく綱吉を逃がしてくれる。

勿論、失恋のことは誰にも言っていない。
ただでさえ少ない友達が減るのも嫌だし、幻滅なんてこれ以上されたくない。
かなり勝手なことを思っているのは分かっている。
それでも甘えてしまうのだ。
特に獄寺には。
言わなくても元気がないことに気づき、さり気なく優しくしてくれる綱吉だけの嵐の守護者。

(俺って最低だ。こんなの逃げているだけだよ)

だけど、この手を離すのなんて無理だ。
自分は今こんなにも、弱っている。
栄養が必要なのだ。
優しさという、栄養が。

(これって利用してるってことなのかな?うわ、やっぱり俺って最低!)

ずんずんと重くなっていく心に、眩暈がした。








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