◇リボーン◇
□謀略と策士(中編)
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『このチケットがあれば一日自由に出入りできるみたいですねぇ。どうしますか』
ひらり、と持っているチケットをかざせば、山本が興味津々といった様子で覗き込む。
『あぁ、本当だ。ここに書いてあるのな。小さくて気がつかなかったわ』
『なら他にもどこか行ったほうが賢明だな』
『それならほら、噴水があるじゃない。綱吉、見たいって言ってなかった?』
さくさくとすすむ話し合いに目を白黒させていると、突然話題をふられて口ごもる。すると獄寺がすかさず助け舟をだしてくれた。
『噴水って、観光名所のか?ここから距離あるじゃねーか』
『別にいいんじゃね?なーんか旅行みたいでさ!』
『それなら泊まる場所も少し遠くにしますか。そのほうが旅行らしいでしょう』
『え、泊まるの!?』
思わず声をあげると、骸はその色違いの瞳を細めてちょっと悲しそうに笑った。
…以前はこんな顔をしなかったのに。
また綱吉の胸の奥が、ちくりと痛んだ。
『綱吉くんは泊まるの嫌なんですか?それともなにか都合が?』
『あ…えっと』
『噴水も、もしかして乗り気じゃないの』
たたみかけるように雲雀に問われ、綱吉は再び口を噤んだ。
(違う、嫌なんじゃない。ただその噴水はあの人と見に行きたかっただけで)
あの人が教えてくれた。すごく綺麗なんだと。
今思えば社交辞令だろうに、今度行こうぜという言葉をずっと信じて待ち続けていたのだ。
その今度、はもう二度とおとずれないのに。
そして泊まりに戸惑ったのは、自分が同性愛者だからだ。
皆は所謂ノンケ、というやつだろうし、綱吉のこともそうだと思っているに違いない。疑いもしないだろう。それが普通だ。
しかし、綱吉は普通ではない。端的に言えば、後ろ暗いことがあるから困っているのだ。
(やっぱり皆には、打ち明けるべき…?)
頭の中でぐるぐると悩んでいると、山本が殊更明るい声で言った。
『取り敢えず、まずはこのボンゴレランドで遊ぼうぜ!その後のことはその後決めればいいだろ』
なぁ、と笑いかけられ綱吉はホッとした。
そうだね、と頷くと皆席をたち、アトラクションへむかって歩きはじめた。
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