10/18の日記

07:01
奥州九尾狐奇談 377
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白いものがフラフラと遠ざかって行く。
憎き狐か?と三成は目を凝らし、それが己の腹心であるのを認め息を呑んだ。
遠ざかる背に腕を伸ばす。

「行くな刑部、私から離れるなど許さない!」

叫んだ瞬間、目蓋が開いた。視界には木目の天井、どうやら布団に寝かされているようだ。
白狐の尾に傷のある脇腹をしたたか打たれて以降の記憶がない。
もしや、己はあれから政宗に捕らえられてしまったのか、と不安に瞳を巡らす三成の耳に吉継の声がした。

「起きたか」

三成はこちらに近寄る吉継に目を移し、半身を起こした。胴体には仰々しく包帯が巻かれている。

「ここはどこだ?」

「軍神の居城よ」

「軍神…上杉謙信か?何故こんな場所に――」

「はなしは ききました」

凛とした声がふたりに割って入った。吉継の背後から白い頭巾の人物、上杉謙信が歩みでる。

「おおさかでのこと、ききおよんでいます。そして、くにざかいでのそうどうも…」

謙信が斜め後ろに視線を向けると、シュッと黒い陰が現れた。謙信の剣、かすがだ。
ふたりを目の端に捉え、三成が吉継に問う。

「刑部、貴様どういうつもりだ」

「なあに、軍神殿に狐狩りの手伝いを頼んだまでよ」

吉継は事も無げに言い、さも可笑しそうに目を細めた。

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