10/21の日記

06:58
奥州九尾狐奇談 380
---------------
佐助が三成の気配を追って夜空を滑る。満点の星空の中、帚(ほうき)星のごとく白い尾を棚引かせる佐助は、酷く陰鬱としていた。
佐助は、振り切ってきた小十郎を思うと胸が潰れそうだった。
『今のお前は、俺の知る佐助じゃねえ…』という小十郎の心の声と失意の浮かぶ瞳が、佐助の脳裏を支配する。
嫌われただろうか。
もう、受け入れてもらえないかもしれない。

――彼処には帰れないだろうか…。

ふと気を緩めれば襲い来る悔恨の念。佐助は頭を振り雑念を払うと正面に見えてきた山を睨んだ。
三成はあそこに居る。
点々と篝火の光が見える山には見覚えがある気がした。
どこか懐かしい気配に、凛とした威厳のある姿が浮かぶ。
ここは上杉謙信の居城だと思い出した瞬間に、どうして三成が謙信の城にいるのか?と疑問が沸き立つ。
訝りつつも、山の中ほどに見える人影に近付いた。
闇の中に浮き立つ金色は見たことがあった。
いつぞや、己を攫おうとした忍だ。彼女なら理由を知っているだろうか。
その顔立ちがはっきりと解るほどに近付いた時、佐助に向かって矢が放たれた。

前へ|次へ

コメントを書く
日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ