10/23の日記

06:59
奥州九尾狐奇談 382
---------------
身体がおかしい。
視界が霞み、手足が重い。
心なしか、指先や尾の先がピリピリと痺れ、ゆっくりと感覚が消えていくようだ。

「ううぅ…」

低く唸り頭を振るも、眩暈は酷くなるだけで、飛んでいる事もままならない。
佐助はついに、地面に降りた。

かすがはふらふらと山頂に向かう白狐を目で追い、駆け出した。
手応えは確かにあった。
あの狐、いや佐助は放たれた矢の中で茫然としていたのだから。
空を漂う狐は徐々に高度を下げ、そしてついには地面に落ちた。
どうやら、矢に仕込んだ毒がうまく効いたらしい。
九尾狐などという人外のモノに人の毒が効くのか不安があったが、目の前の状況に、かすがは少しばかり緊張をといた。
あとは、あの狐を捕らえれば、謙信は自由になるのだ。
かすがが、立ち上がろうと藻掻く佐助の前に立った。
その周りを、この周囲に詰めていた兵士達が刀を構え取り囲む。
完全に包囲された佐助は、空に逃げるどころか身体の自由もきかず、四肢を踏ん張り倒れないようにしているのがやっとである。
佐助は霞む眼を数回瞬き、気丈にも、眼前に佇むかすがをねめつけた。

前へ|次へ

コメントを書く
日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ