10/24の日記

06:59
奥州九尾狐奇談 383
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霞む視界の中で、かすがの冷たい眼差しが佐助を射抜く。

「貴様もこれまでだ」

かすがが右手に扇のように苦無を広げ、主同様、凛とした声を発した。
続いて複数の苦無が佐助を狙う。天蚕糸(てぐす)のついたそれは佐助を捉え、今や血で桜色に染まった白狐をからめ捕った。
桜色の毛皮に天蚕糸(てぐす)が食い込む。身体が軋み、霞む視界、朦朧とする意識の中でも痛覚だけは正常に機能し、佐助に確実に痛みを伝える。苦痛に顔を歪ませ喘ぐ佐助は、生命の危機を悟った。
ここまでか、ここで己は終わるのだろうか。
諦めの色が金色の瞳に影を落とす。が、それはすぐさま払拭された。天蚕糸(てぐす)に締め付けられ呻く佐助の脳裏に小十郎の姿が浮かぶ。

――嫌だ!死にたくない…まだ死ねない――!

『ウウウ…オオオォォォオオ――!!』

佐助が唸った。それはやがで地を揺るがし空を震わすような咆哮に変わる。
咆哮を上げる佐助を中心に、ビシビシと大気が悲鳴をあげ渦を巻く。

「くっ、何事だ!?」

小さな渦はすぐに大きな竜巻となり、かすがをはじめ佐助の周囲に居る者を空中へと巻き上げた。

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