10/27の日記

07:16
奥州九尾狐奇談 385
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佐助は、己の身体がカッと熱くなるのを感じた。一瞬に沸き上がり、周りのものをも沸騰させる程の熱。
それは、たぎる佐助の命そのままだった。
微動だにしなかった身体が動いた。
佐助の口から咆哮が迸(ほとばし)り、己でさえどこをどうして動けたのか、動いたのかわからないが、すっくと立ち上がる。紗を一枚通したような霞んだ視界の中、血走った金色の眼をただ山頂に向け、やにわに駆け出す。
まだ身体の感覚は戻らないが、変わる景色に己が移動しているのだと理解する。
目指すは凶王石田三成。
何者にも邪魔はさせない。
何者にも――。
その時、前方に見えてきた土累の上に銃を構えた兵士達が横並びに現れた。
パンパンと発砲音があがり、木々にこだまする。
佐助はそれらを軽くかわすと、雄叫びを上げた。
風の刃が飛び交い、鉄砲兵達を薙ぎ倒す。佐助は呻く人の塊を無感動に見下ろし、飛び越えた。
途中何度も同じ様な場面があったが、佐助の脚は止まることはなかった。
幾度目かの攻防ののち、地平の先に本丸と思しき屋根が見えた。

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