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□どっちがメインだ。
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『今日誕生日の子がいたんだけど、作りすぎちゃったみたいだから』
…テイトくん、食べてくれるかな??
「って言われたから素直にもらったんだ」
夕食の片付けを終えた恋人が嬉々として語る。
ここはマンションの6階、男の一人暮らしにはやや広いオレの部屋だ。
先ほどまで身につけていたシンプルなエプロンを外したテイトが、小さな箱とカップを携えてリビングへ戻ってきた。
「へぇ、ケーキねぇ…」
「凄いよな、ラブラドールさん。手作りだってよこれ」
よいしょ、とソファーから身を起こし、箱の解放にかかるテイトを眺めた。
ついでに、不満の一つでももらしてやろうかと思う。
「で、お前は今からそいつを食うと」
「フォーク出したら普通そうなるんじゃないか??」
「…生クリーム嫌いなオレの目の前でか??」
嫌がらせかコラ??とあからさまには言わないけれど。
「分かってるよ。だからほら、フラウにはこれ」
対してテイトは、オレの剣呑な視線を予想していたのだろう、カップをつつつ、と押して寄越した。
「コーヒー淹れといた」
これで我慢してろということだろうか。
多少ぶっきらぼうに言われてカチンとくるところもあるが、テイトの場合は別だ。これは一種の照れ隠し。
…こうなると遊びたくなってしまうのは、可愛い恋人目の前にしたら誰だって同じだろう??
「ふうん…」
「えっと…」
いいぞいいぞ、困れ、困った顔も好きだぜ←
「…一人で食うのもさ、なんか…寂しいし」
意外と早く折れたうえになんつー可愛い答えだ。オレは必死で何かをこらえて、平静を装ってカップを手にした。
「ま、ならしゃーねぇか。寂しがり屋に付き合ってやるよ」
「悪かったな寂しがり屋で!!」
おっと危ない。フォークが飛んでくる。