三ねね話(戦国)

□さくらの頃〈2.皐月〉
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生い茂る木々の緑が眼に痛い。




遠く晴れ渡った空はどこまでも清々しく、
新緑の香りも心洗われるようで心地よい。

よいのだが。


こうも毎日陽射しに照りつけられると少々嫌気がさしてくる。



眼を閉じても手をかざしても、
容赦なく飛び込んでくる眩い光。

まるでこちらのことなどお構いなしな様が、
何かを彷彿とさせるような…。





「三成、支度はできた?」



…ああ、やはりこの人だったか。





陽に透ける短めの髪をふわふわと踊らせ、
照りつける太陽にも劣らない明るさでもって、
大手を振り振り駆けてくる。

内心げんなりとしながらもはい、と手短に返す。



出陣前であわただしい人混みの中、
わざわざ俺の所までおいでになるとはご苦労なことだ。


さてはいつものお説教かと聞き流す体制に入った所、




「三成。うちの人のこと、よろしくお願いね」




三成が側に居てくれれば安心だから。

根拠もなくそう勝手に決めつけてくれるのは流石といったところか。



彼女は笑顔で頑張ってね、とお決まりの言葉を投げて、
清正達の方へと歩いて行く。

そうして今俺に言ったことを繰り返し言うのだろう。




だから俺はつい言ってしまうのだ。


頑張るって具体的にどういう意味ですか。





その言葉に困惑する彼女の姿を見て、
少しだけ胸がすく気がするから厄介だ。

…別に困らせたい訳ではないのだが。



そして殿のことを頼むと言われた時の俺の気持ち。






あなたからは言われなくない、と思ったのは…



さて何故だろう。












***





【天真爛漫のおっかさんに逃げ腰だけど、何やら無意識にジェラってる模様…です?】

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