NOVEL ーOriginal
□約束(未完)
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それ以来、私も余計な手出しはせず愛美にお任せすることにした。
人には向き不向きというものがあるんだよ、うん。
愛美も、そういうのを黙って見ていられない性分なんだから、きっとバランスが丁度とれているんだ。
もうこれは、鍋奉行ならぬイベント奉行って感じで。
愛美のイメージは、どちらかというと天然タイプ。
いつもただニコニコしてて、急いだり焦ったりするのも見たことがない。色々気づいてくれるわりに、結構ドジだし。
聞くところによると、平日は慢性的に忙しく帰宅はいつも0時を過ぎるらしいんだけど、彼女がバリバリ仕事をする姿はどうも想像できない。
今だって、食べ残しや食器やらを次々に重ねて持っているけど…手元があぶなっかしくて、今にも崩れそう。見ているこっちが気が気じゃない。
この愛美が、仕事の合間にみんなの企画の準備を次々にこなしていけるのが不思議だ。
でも、最近はちょっと彼女の様子が変わってきた。
イベント案が出ると、なんだかんだ文句を言いながらも「いつ頃がいいの?みんなの予定は?」と、どんどん具体化させていくのに、今回は本当に断ろうとしているみたい。
「…愛美、最近忙しいの?」
前から忙しいのは知ってるけど…思うよりも先に口が動いていた。
愛美は動きを止めてこっちを見た。
…だから、手元から目を離したら危ないってばっ
「え?私?…うーん、忙しいというかなんというか…わぁっ」
愛美が直に掴んでいるお皿一枚だけを残し、その上に重なっていた食器や食べ残しは、見事に全部崩れ落ちた。
「っ…またやってる…」
「…いい加減、学習しろよー?」
「……あははは…ごめーん」
あちこちからみんなに突っ込まれ、あぁもう面倒臭い、と呟いた愛美は側にあったポリ袋を広げると、手元に残ったお皿を放り込み、落ちた物も手当たり次第に鷲掴みして放り込んだ。