脱色

□Crazy you!
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暑い。疲れた。ダルい。面倒臭い。

そんなことをボヤキつつも、何とか終わった。

何がって、授業以外に何かある?

ほんと、夏の学校は最悪としか言いようがない。




バイバイ。またね。

なんて、そんな言葉が飛び交う教室。

やっとこさ帰れる。



「真白、帰ろうぜ」

『ん、うんっ』



そんな中、私に声をかけてきたのは恋次。

私の彼氏だ。

いつものように、他愛もない会話をしながら私たちは歩く。


玄関で靴を履き替えると、自転車置き場へ。

恋次の自転車があるから。



「今日も暑いな」

『だね。ヤんなっちゃう』



私はいつも、恋次の後ろに乗って登下校している。

その方がよく喋れるから、って恋次は言って、高校に入ってからはいつもそうしてる。

中学のときは徒歩だったからね。



「落ちんなよ?」

『うん!』



恋次の腰に手を回して、ぎゅっと抱きつく。

もちろん落ちないように。


夏だと、涼しい風が吹き抜けていって気持ち良かったりする。

だけど恋次は大変なんだろうなぁ、って思う。



『ね、恋次』

「なんだ?」

『大変?』

「んなことねーよ」



信号で止まったときに、訊いてみた。

うーん、確かに言うほど大変じゃないのかも。

だって恋次、汗かいてないんだもん。

背中、めちゃくちゃサラッとしてるんだもん。



『今さ、』

「ん?」



それにしても、ここの信号はいつも長い。

国道で道幅が広くて車が多いから、ってワケだけどさ。



『えっちなこと考えてる?』

「な゛っ……!真白お前っ、いきなり何言い出すんだよっ///」

『あ、図星?』

「そ、そそそ、そんなわけ、ねーだろっ!」



恋次がめちゃくちゃ焦ってる。

可愛いとこあるじゃない。

なんて思ったことは、私だけの秘密。



『私のことなら、どんなこと考えてもいいからね?』



信号が青に変わった。

車やバイク、歩行者や自転車が動き出す。

恋次もペダルを踏み締めた。


車の音がうるさくて、はっきりとは聞こえなかった。

だけどちゃんと、私の耳には届いたんだ。

恋次の言葉が。



「真白のことしか考えてねえよ、ばーか///」






(2009.08.19)


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