君の中へ堕ちてゆく

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朝から、真選組総出で、総悟を捜してる。

街とか建物の中とかはもちろんのこと、郊外とか近辺の街とかも捜し回ってる。


あたしも真選組の一人。

やから、みんなと一緒に総悟を捜してる。



「いたか?疾風」

『こっちはいませんでした。副長の方は?』

「こっちもいねェ。たく総悟のやつ、何処行っちまったんだよ……」



局長や副長、山崎くんだけじゃない。

ホンマに真選組のみんなが、総悟の心配してる。


やのに総悟は、一体何処に……。


――珠姫



『総悟……?』



今、総悟の声が聞こえた気がする。

あたしは辺りを見回してみたけど、それらしき人影はなかった。


気の所為かもしれん。

そう思って、あたしと副長、他隊士数名は次の場所に移動した。


――珠姫



『やっぱり、総悟?』



次の場所で総悟を捜してても、また総悟の声が聞こえた気がした。

幻聴なんか、本物なんか、わからへん。


――珠姫、俺ァ……。



『総悟?総悟なん?』

「どうした?疾風」

『頭の中に、沖田隊長の声が……』

「総悟の声?」



聞き返してくる副長に、あたしは頷いた。


――珠姫、俺ァ、俺ァ……。


どうしたん、総悟?

と、頭の中で呼びかけてみても、返事は返ってこーへん。


ただ一方的に、総悟の声が聞こえるだけで。


――俺ァ、どうすればいいんですかィ……?

――教えて下せェ、珠姫……。



プツン、と音が聞こえた。

それ以降、総悟の声は全く聞こえへんようになった。


あたしらは必死で総悟を捜した。

聞き込みとかもした。

裏路地とか小さなお店とかも見た。


とにかくどんなところも、何度も手分けして捜した。

でも総悟は見つからんくて。


時間は過ぎていくばっかりで、遂に夜になってもた。


あたしらは総悟の捜索を一旦やめて、屯所に戻った。


あたしはその日、布団に入ったはいい。

けど、朝方まで眠ることが出来ひんかった。

次の日の朝ご飯も、ろくに喉通らへんかった。

総悟のことが、心配すぎて。



『どーしよう……』



こんなこと初めてやった。

今まで、何があっても寝れてたのに。

どんだけ不安でも、睡魔には勝たれへんかった。

けど今回は違う。




君、いずこへ……。

部屋で一人おるときに、不安の涙が頬を伝ったのを、あたしは拭わへんかった。






(2009.07.23)


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