believe-心-
□あとがきとおまけ
2ページ/2ページ
正式に(?)雛乃咲菜に戻ってからというもの、隊士の人たちには色々聞かれた。
そのおかげで、物事を簡潔に話すというスキルが身に付いたように思う。
徐々に隊士の人たちも本来の私に慣れてきてくれて、気さくに話しかけてくれるようになった。
そんなある日のこと。
暑くもなく寒くもなく日向ぼっこをするのにちょうどいい、穏やかな天気だった。
『おばちゃん、焼き飯と天津飯とハンバーグ定食と、あと餃子とマカロニサラダ!デザートにバニラアイスとチョコレートアイスと、特大プリンください!』
「はいよ、今日もよく食べるねぇ。おばちゃんも作り甲斐があるってもんだよ」
『今日は久しぶりに暴れてきたから特別お腹空いてるの。それに、おばちゃんのお料理美味しいんだもん!』
「いつもありがとうね。デザートにもう一品、おまけしておくよ」
おばちゃんにお礼を言って適当な席につく。
まだ11時という時間の所為か、他に隊士はほとんどいなかった。
しばらくぼーっとして待っていると一番に天津飯とマカロニサラダが出てきた。
いただきますと言って食べ始める。
と、誰かが食堂に入ってきたのが見えた。
「咲菜、今日はそれだけか?」
『副長。いいえ、まだまだですよ!他に焼き飯とハンバーグ定食と餃子も食べます!デザートはバニラアイスと、』
「チョコレートアイスと特大プリン」
『えへへ、正解です!あと、今日はおばちゃんがおまけにもう一品出してくれるって!楽しみです!』
副長は呆れたような顔をしながら、カウンターの方へ行って何かを注文していた。
流石に私みたいに大食いというわけではないので、おそらく一品プラス何かくらいだろう。
戻ってきて私の隣に座ると、コップの半分くらいまで水を飲んだ。
何となーくじっと見られているような気がして副長の方をみると、珍しく私の勘は当たっていた。
『どうかされました?』
「飯の後、どっか行かねェか」
『いいですよ、屋根の上はどうですか?今日は天気もいいですし!』
「咲菜お前ェ、好きだな、屋根の上」
一時間半くらいして全てを平らげてから、おばちゃんにごちそうさまを言って副長と二人、屋根の上へ行った。
屋根の上で寝転んで青い空を見上げた。
ついうたた寝してしまいそうなくらい、今日は本当に暖かい。
思わず目を閉じると副長に名前を呼ばれた。
「なァ、咲菜」
『何でしょう』
「その敬語、やめねェか?」
『へ?』
そういえば、癖でずっと敬語で話していた。
役柄のこともあったし余計そうなのだろうけれど、確かに恋人同士なのに敬語というのも不自然だ。
体を起こして副長を見ると、副長は私が考えていた通りのことを告げた。
やはり恋人同士なのに敬語ということに対して考えることに、さほど変わりはないらしい。
『じゃあ、こうしよう!仕事中は敬語、それ以外は敬語を外す、というシステム!』
「まァ……咲菜が言うなら、そうするか」
『不満?』
「いや、そういう性格なんだろ、咲菜は」
ごめんなさいと謝ると、ただ無言で抱きしめられた。
未だに副長に抱きしめられるのは慣れない。
だから……あの日に、自ら副長にキスをしたことを思い出す度に恥ずかしくなる。
ふ、と力を抜いて副長に体を預けた。
きっと赤くなっているだろう顔を見られないように、首筋に顔を押し付けて、背中に手を回した。
「咲菜らしくて、その方がいいかもな」
『何か言った?』
呟いた副長の言葉は聞き取れなくて、尋ねてみたけれどはぐらかされた。
私も副長に聞こえないように小さな声で、大好きですよーと言ってやった。
案の定聞き返してきたから、何でもないとだけ答えた。