脱色

□Are you afraid of time?
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私の家、私の部屋。

修兵はお風呂に入っている。

私は先にもう入った。


……ダメだ。やっぱり怖い。

どうしてだろう。

どうして私は、こんなにも怖がっているのだろう。



「どうした?真白」

『修兵……私、怖い』


「……俺がか?」

『ううん、時間が。明日になるのが怖いの』



お風呂から上がってきた修兵が私に問う。


時間が経つのが怖い。

明日になるのが怖い。


時間がなければ私は今此処にいないって、修兵と出逢えてなかったってわかってる。

修兵との未来もないし、夢も叶わない。


わかってる。

わかってるけど、とてつもなく怖い。



『明日になったらね、死に際にいるんじゃないかって思っちゃうの。

昨日、護廷十三隊に入隊したような感じがしてね、

だけど入隊したのはずっとずっと前で……。

そう思うと、明日には死に際にいて、

色んなこと振り返ってるんじゃないかって思うの』

「真白……」

『この世に“時間”が存在しなかったら、今ここに自分がいないって、

修兵と出逢えてなかったってわかってる。

修兵との未来もないし、夢だって叶えられない。

わかってるの。全部全部わかってるのに……怖いの』



私の目から涙が頬を伝って零れ落ちる。

私は体育座りをして顔をうずめたまま、涙を拭うことはしない。


不意に、グイッと引っ張られたかと思うと、私は修兵の腕の中にいた。

修兵、と彼の名前を呟き、私は修兵の背中に手をまわした。

修兵の胸は、広くて温かかった。



『修兵っ、どう、しよう。私、どうしよ……っ。

楽しみがあれば、早くその日に、なって欲しいって、思うの。

だけどやっぱり、明日は来て欲しく、なくて……っ』

「安心しろ。俺がいつも傍にいてやるから」



修兵の腕の力が強くなったのがわかった。


何故だろう。

修兵の腕の中は、すっごく安心出来る……。



「明日にならねェと、おはようのキスが出来ねェだろ?」



私を身体から少し離した修兵は、私の顎を左手で持ち上げ、キスをした。

長いキスだった。



『明日にならないと、おはようのキスが出来ない……』

「そうだろ?」

『……うん』



私は頷くと、修兵はまた私にキスをした。

今度は短かった。




もう怖くない。

“時間”なんて怖くない。

時間が進むのも、明日が来るのも怖くなんてない。


修兵がいるから怖くなんてなくなった。


私の傍にはいつも修兵がいてくれる。

いつまでもずっと。


そりゃぁ任務のときは躯は傍にいない。

だけど、心はいつだって共にある。


また怖くなれば、修兵に抱きしめてもらえばいい。

修兵の腕の中で泣けばいい。

安心出来るから。








(2008.08.14)


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