君の中へ堕ちてゆく

□08
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珠姫は押入れの中から、一冊のノートを取り出してきた。

かと思えば、なにかぶつぶつ呟きながらノートをめくっていく。



『さぁ沖田くん!クイズの時間や!』

「……?」



いきなりの変なテンションに、俺は頭に疑問符が浮かんだ。



『0、1、8のうち、あたしは何番が好きでしょうか?!』



0、1、8のうち、珠姫の好きな番号……。

ていうかまた番号のチョイス、変ですねィ。



「8、ですかィ?」

『おっせいか〜い!ちなみに理由は、左右対称(シンメトリー)やから、ね』



シンメトリー、か。

変な奴でさァ。

珠姫ってシンメトリー気にしてたっけか?


それよりクイズした意味って……。



『ほいじゃ疾風珠姫、曲は≪die≫で、もちろん作詞作曲共にあたしです』



あの日のように珠姫が言う。

はやし立てる隊士たちはいなく、此処にいるのは俺と珠姫だけだ。



『生きてゆく意味を
知る者はいるの?
死んでゆく意味を
知る者はいるの?
生きると死ぬは同じですか?

いつの日か
死にゆく運命ならば
想い出少なく
死んでゆきたい
哀しむ顔は見たくないの


生きてゆく意味を
教えて下さい
死んでゆく意味を
教えて下さい
生きると死ぬは違いますか?

いつの日か
死にゆくこの身体なら
思い切り傷を
つけてゆきたい
綺麗に死んでゆきたいから』



シリアスな歌……。

曲調も歌詞も暗い。


この歌を聴いて感じたことは、それ。



「やっぱ綺麗な声でさァ。それより珠姫、クイズした意味って……」

『おーきに。クイズ?あぁ、単に番号選んで欲しかっただけやで』



ニシシと笑って珠姫が言った。

珠姫の歌った歌とは正反対だ。




今日珠姫が歌ってくれた曲は、何故か、珠姫の裏側を見ているような気分になった。

本当に珠姫の裏側は、シリアスなのかどうかはわからねェ。

けど、本当のような気がした。


もしかしたら、この歌を作ったときに、ただシリアスな気持ちになってただけ、かもしれねェ。

けど俺の全身から、これは本当だと言い続けやがる。



――証拠もないのに。





歩んできた道程……。

つまり君の過去は、君が話してくれないから未だに謎のまま。






(2009.07.23)


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