君の中へ堕ちてゆく

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副長が天人のアジトを見つけた、っていう連絡が入った。

だからあたしは、現場に駆けつけてみる。


其処は、昨日まで空き地やったとこやった。

其処には病院の縮小版みたいな建物が建ってて、正面に扉がある。


行けと命令がないから、隊士はその場で警戒したまま。



『沖田隊長!』

「……待て疾風」



扉から総悟が出てきたから駆け寄ろうとする。

そうしたら、副長に止められた。


あたしを止めた副長が言ったんは、この一言。



「総悟の様子が変だ」



総悟をよー見てみた。


そしたら総悟は、いつものSな目じゃなくて、虚ろな目をしてた。

まるで、生気を抜き取られて、操り人形と化した人間のような目。


総悟が剣を抜いて、構える。

それを見た副長も、剣を抜いて構えた。



『副長……。あたしに、戦わせて下さい』

「疾風?」



頭に疑問符を浮かべてる副長の前に出て、総悟と向かい合う。

もちろん剣を構えて。



「もう来てたんザマスか」

『お前は……っ、ザーマス、星人……!』



扉の向こうから出てきた天人にあたしは、驚いた。


ザーマス星人。

あたしが京におった頃に、一回だけ戦ったことがある。


昔のこと思い出して、ザーマス星人に斬りかかろうと走ってく。

剣を振り下ろそうとした。

でも、総悟が前に立ちはだかって、あたしの剣を止めた。



『総悟ッ!』

「無駄ザマスよ。お前にはコイツと戦ってもらうザマス」

『くそッ!』



あたしは一旦、ステップバックで後ろに下がって、剣を構え直した。


ザーマス星人が総悟になんかを言うと、総悟が飛び掛ってきた。

だからあたしは、戦った。

いくら考えても、総悟を止めれる考えが浮かばへんかったから。


戦って戦って戦って……。

でもただ時間が過ぎて、体力は減っていく一方やった。

無情にも、どんだけ戦っても総悟は操られたままで。


……あたしは、命を捨てる覚悟を決めた。

賭けに出る。

よくてもあかんくても、死ぬかもしれへん。


あたしは剣を鞘に収める。

賭けに出る為に。


向かってくる総悟に、あたしは丸腰のまま突っ込んだ。


副長とか局長が、あたしの名前後ろで叫んだ。

けど、そんなこと気にしちゃいられへん。



『目ェ覚まして、総悟っ!』



あたしは叫んだ。

と、同時に、ぐさっと鈍い音がして、あたしの腹に剣が刺さる。

血が、噴き出す。


そんなにも関わらず、あたしは総悟の頬を両手で包むようにして、総悟にキスをした。


あたしの腹から剣が抜かれて、あたしはその場に倒れた。


意識はもう半分以上なくて。

でもはっきりと総悟の声は、聴こえた。



「珠姫ッ!」




Must I say Good-bye to you?

――あたしは、総悟にさよならを、言わんとあかんの……?


総悟が元に戻ってよかった……。

そう思って、あたしの意識は消えていった。






(2009.07.23)


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