believe-心-

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あれから――屋根の上で、灯を抱きしめちまってから、2週間くらいが過ぎただろうか。


書類整理ばかりして疲れた。

だから、少し休もうと、俺は縁側に座っていた。



「灯!」

『……なんだ、土方十四郎か』



少し向こうに灯の姿を見つけて、呼び止める。

来ることは、あまり期待してねェけど。



「来い。暇つぶしに付き合え」

『何故俺が』



灯は文句を言いながらも、俺の方に歩み寄ってくる。


マイペースに、俺の左隣に座った。

こういうところが、変わったんだと俺は思う。



「珍しいじゃねェか、来いと言って来るなんてよ」

『行かねェとどうせ、あとで理由とか問い詰められるだけだろ。面倒だ。だから来た。俺だって学ぶ』

「今日はよく喋るじゃねェか。そんなに俺と話がしてェのか?」

『てめェが俺を呼んだんだろ。くだらねェこと抜かすな』



相変わらず口調は男だ。

だけど今日は、言葉が多い。

ところどころ単語のところもある。


前なら、どうでもいいだろ、とかって言って、一言だけで片づけていたのに。



「灯、お前ェ誕生日はいつだ?」

『訊いてどうする?』

「いいから答えろ」

『……1月31日だ』



面倒だ、というような感じで、灯は答える。

出会った頃のさくらなら、答えてくれなかっただろう。

それにしても1月か……まだもう少し先だな。


灯の誕生日を迎える頃には、灯はどうなっているのだろうか。



「灯お前ェ、もしかして……」

『なんだ?』

「誕生日祝ってもらったことねェとか?」

『バカにするな。誕生日に祝ってもらったことくらいある』



そういや元攘夷志士っつってて、万事屋と知り合いなんだっけか……?

万事屋なら誕生日に祝うこと、しそうだな。



今日は珍しく、会話が弾んだ。

灯とこんなに話をしたのは、初めてじゃねェかと思う。


灯はいつも大体、決まって一言で返事をする。

だから文章で話したことは今までないと思う。

今日が初めてかもしれねェ。


大抵一言の返事しかしなかった灯が、今日は何故か文章で返事をしてくれた。

からかいには乗ってくれなかったけど、俺は嬉しかった。




話すことの喜び。

話すって、楽しいだろ?

君はそれを、俺と話して知ってくれただろうか。






(2009.07.24)


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