believe-心-

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「おい聞いたか?高杉が江戸に来てるらしいぜ」

「嘘だろ?ちょっと前来たばっかじゃねェか。居場所とかわかってんのか?」

「居場所はまだわかってねェって副長が言ってた」

「また戦わなきゃなんねェのか?俺ら」

「さァな。副長次第なんじゃねェの?」



朝起きたばかりのとき。

もちろんボーっとしていた。

そのときに、ふすまの向こうから聞こえてきた会話。


私は急いで着替えて部屋を飛び出した。



「待て灯」

『……たく、なんだよ?』

「何処へ行く?」

『何処でもいいだろ。今日俺ァ非番なんだ。てめェには関係ねェ』



副長に、晋助のもとへ行くなんて言えば即お陀仏だ。

それだけは嫌だ。



「街にゃ高杉がいるかもしれねェ。気をつけろ」

『言われなくてもわかってらァ』



屯所を出た。足に任せて歩いた。


着いたのは、とある港。

そこには一隻の船。


これか……。

と私は呟いて、船に近寄った。



「誰だ」



船に入ろうとすると、中から声が。

紛れもなく晋助の声だ。

懐かしい、私の好きだった声。



「……咲菜じゃねェか」

『久しぶりだね、晋助』

「お前ェ、今まで何処にいた」

『色々とね』



私だとわかると、晋助は船に上げてくれた。


今いるのは、晋助の部屋。

薄暗くて、晋助を映し出しているようだ。



『もうみんな、バラバラだね』



突然に話を切り出す。

怒られるかと思ったけれど、怒られなかった。


その話はするな、と言われそうだったのだけれど。



『銀時は万事屋なんてやってるし、辰馬は宇宙らしいし』

「あァ。咲菜は今、なにやってる」

『私?私は真選組にいるよ』

「こんなとこ来てもいいのかァ?俺ァ敵だぜ?」



いいんじゃないの?バレなきゃ問題ないし。

晋助が敵だろうと、私にしたら昔の仲間だし。

そう、私は返した。


晋助のことに関しては、私は何処の敵でも味方でもない。

中立を守る。

だって、晋助は昔の仲間だから斬りたくないし、晋助に斬られたくもない。

だからって真選組を斬ったり、真選組に斬られたりも嫌だ。


私と晋助は陽が暮れる少し前まで、話していた。

晋助は昔と、なにも変わってなどなかった。




私は一種の敵でもある。

もちろん、味方でもあるけれど。

見方を変えれば、私は真選組と鬼兵隊の敵にも成りうる。

そんな存在。






(2009.07.24)


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