believe-心-

□24
2ページ/2ページ




こんなにも楽しいパーティーは初めてだ。

今までのパーティーは、攘夷活動中だったから余りうるさくは出来なかった。

それでも、楽しかったけれど。



「……灯?」

『、何だ』

「大丈夫か?」

『何がだ』



心配される理由がわからない。

私は特に何もしていない、ただここに座ってパーティーという騒ぎを見ながらお酒を飲んでいるだけ。

それも、そんなに多量のお酒を飲んだわけでもない。


私は酔ってなど。



「少し酔ったんじゃねェか?」

『大丈夫だ。問題ない』

「本当か?顔赤いし、ぼーっとしてるぞ」

『問題ない』



酔っている?私が?


……いやそれは違う。

ぼーっとしていたのは、昔のことを思い出していたからであって、決して酔ったからではない。

懐かしい、過去のことだから。



「そうなら、いいが」

『あァ』



ちらりと副長を目で見遣る。

が、特に何もない。


部屋の中を目だけで一度見渡してから、私はグラスに残っていたお酒を飲み干した。

相変わらず部屋の中は賑やかだ。

本当に私の為の誕生日パーティーなのか疑ってしまう。

けれど、部屋の飾り付けがそうなのだと強調している。


確か昔は、やっぱりこんなことは出来なかった。

少し豪華な物を食べて、少し高級な物を飲んで、おめでとうと言って、他愛もない話をして、それで終わり。

敵に見つかってはいけなかったから。



『……どうやらお前ェの言う通り、少し酔ったらしい』

「灯、」

『部屋に戻る』

「灯」



副長が私の偽の名前を呼ぶけれど私は部屋を出た。

昔を思い出したら、涙が出てきたから。


不覚だ、もっと緊張感を持たなければいけないのに。

糸をピンと張り詰めていついかなる時も全てのことに対応出来るようにしていなければいけないのに。



「灯!」

『……っ』



副長が私のあとを追ってきていたみたいで、腕を掴まれ引き寄せられた。


……また、抱きしめられた。


それに私は副長の気配に全く気づかなかった。

失態にも程がある、何だこの体たらくは。



「どうして泣いている?」

『るせェ、泣いてねェ』

「泣いてんだろ」

『泣いてねェ』



嗚呼もうやめて、お願いだから。

貴方の温もりが涙を溢れさせていることに気づいて、離して。

私を一人にさせて。




どうして貴方は、こんな私にこんなにも優しいのですか?

何もしていない私に、優しさなど与えて良い筈がないのに。






(2010.05.08)


次の章へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ