believe-心-

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私の誕生日から、二週間近くが経った。

いつものように過ごしていると、突然屯所内がざわつき始めたように感じられた。


原因を探る為に部屋から出て屯所を歩いていた。

だけど私の歩みは、入り口付近で止まった。

私からは見えるけれど入り口の方からは見えない場所。



『母さん……!』



思わず口から零れて、慌てて両手で塞ぐ。


母さんは副長と話している。

内容は、きっと。


動かせなくなりつつある体に鞭打って、私は必死で元来た道を行く。

と、不意に腕を掴まれて部屋に引き込まれた。



『沖田、隊長、』

「大丈夫か?咲菜」

『なんとか……大丈夫、です』

「ならよかった」



今沖田隊長が部屋に引き込んでくれなかったら、私はきっと見つかっていた。


見つかりたくない見つかりたくなんて。


沖田隊長が私の頭にその大きな手を置いてくしゃりと撫でてくれた。

怖くて怖くて怖くて、沖田隊長にしがみついた。

柄にもなく、自分でもわかるくらいに震えていた。



『どうしよう……』

「旦那のところに行きやすかィ?」

『銀時、の?』

「知ってるんだろィ、咲菜のこと」



こくりと頷くと沖田隊長は私を一度ぎゅっと抱きしめてくれた。

すぐに私を離すと、部屋の一番奥の右端の畳を持ち上げた。

沖田隊長が手招きをするから、私は歩み寄る。

指の先、畳のあった場所を見てみると地面が見えた。



「ここから抜けれる。下りて下せェ」

『……はい』



私は下りた。

続いて沖田隊長も下りてきて、隊長は畳をきれいに元の通りに直した。


先に様子を見てくるから待ってろと言いながら先に行く隊長の背中は、大きくて頼れる存在だと心から思った。


少しして隊長からの合図があって私は隊長と一緒に屯所を抜けた。

そのまま二人で銀時の元へ。

見つかったらまずいからと小走りで万事屋を目指した。




母さんだけは来て欲しくないとずっと願っていた。

だって母さんに見つかったら、私は……。






(2010.05.29)


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