believe-心-
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「御用改めである!真選組だ!」
『俺の家族を酷い目に遭わせたのは貴様らか』
二人で壊れてなくなったのであろう扉の向こうへ足を踏み入れた。
咲菜は以前のあの男口調に戻っていた。
俺たちと話していたときより低い声だ。
それだけ咲菜が怒っているという証拠だろう。
「雛乃咲菜と、鬼の副長か」
「二人だけで来るとはいい度胸だな」
『貴様らには俺たちだけで充分だからな』
「言うじゃねェか」
咲菜がすっと剣を抜く。
それとほぼ同時に、話していた奴らの後ろから虫の子のようにバットやら何やらを持った奴らがぞろぞろと出てくる。
俺も剣を抜いて構えた。
咲菜は構えることをしないでただ右手に剣を握り腕を下ろしている。
そういえば、咲菜には剣の型がない。
『副長』
「どうした、咲菜」
『こいつら強いです、強くなってます』
「知ってるのか?」
問えば、咲菜は小さく頷いた。
向こうはまだ襲ってくる気はなさそうで、少しなら話が出来そうだ。
きっと咲菜はそれを察して俺に話しかけたんだろう。
互いに敵を見据えたまま、話す。
『右の頬に三つ傷がついている奴がこいつらの頭です。二つが二番目、一つが三番目で、傷がついていない奴らはそれ以下です』
「強さの順で並んでるのか?」
『恐らくは。だから副長、気をつけて下さい。――死なないで、下さい』
「……あァ」
最後の一言を言うとき、咲菜は俺の方を見た。
その表情は真剣なもので、だけどとても切実なことが伝わってきた。
眉間に皺を寄せて泣きそうな顔だったから、抱きしめて安心させてやりたい衝動に駆られた。
俺の返事を聞いた咲菜は、そのまま前を向いて敵に突っ込んで行ってしまった。
咲菜のあの表情には、どんな感情が隠されているのだろうか。
俺には、わからなかった。