believe-心-

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少し息が上がっている俺に対し咲菜は少しも息が上がっていない。

ただ静かに敵の頭と睨み合っている。


辺りに沈黙が流れる中、それを先に破ったのは敵の方だった。



「家族を助けに来たか雛乃咲菜」

『それの何が悪い』

「愛だなと思ってな」

『……』



何となく咲菜が眉間に皺を寄せているような気がした。

背中越しに伝わるのは、咲菜の決意だけ。

必ず家族を助けだそうという強い決意。


いつ戦いが再開してもいいように柄をしっかりと握り直した。



「愛は醜い。しかし愛が途切れるのを見るのは実に愉快だ」

『たわけ。家族を殺した貴様に愛の何がわかる』

「俺が家族を殺したのは奴らが俺を裏切ったからだ。愛は醜く美しい、だからこそ切るのだ」

『黙れ!貴様に愛がどうだの語る資格などない!』



咲菜は俺に端の二人を頼むと短く言って駆け出した。

待て咲菜、と呼び止めたが咲菜には聞こえなかったみたいだった。

だから俺は二番目と三番目の二人を相手にした。


思った程強くはなくあっさりと倒せた。

咲菜の方は苦戦していたが、手を出してはいけないような気がして戦いが終わるのを待った。


しばらくして、



『ありがとうございました、副長』



と、傷だらけになって咲菜が俺の元へ戻ってきた。

戦いは熾烈なもので、相手は拳銃を隠し持っていた所為で咲菜の体には幾つか穴が開いていた。


応急処置を済ませると咲菜は何も言わず廃ビルを出た。

家族の元へ行くんだとすぐにわかった。


手紙に書いてある場所に行くと、あちらこちらに人が倒れていた。

きっと此処を守っていた敵だ。

真選組の奴らがやったに違いない。


咲菜はそれらを気にせずにただ真っ直ぐ建物へ入った。




何を思って咲菜は敵と戦ったのか。

多くを語らない咲菜の心情はやはりわからないまま。






(2011.03.31)


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