believe-心-
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突然大きな物音が聞こえたかと思うと、土煙が舞い上がる。
その向こうに見えた人影。
しばらくして土煙が晴れると、倒した筈の敵の頭がいた。
傷一つ付いていない。
『貴様……ッ!』
「俺が生きていて驚いたか?」
『貴様はこの俺、この手で!殺した筈だ!』
「残念だったな、アレは替え玉だ」
咲菜は家族を庇うように前に立ち、剣を抜く。
俺も何かあったときの為にと柄に手を添える。
目の前の敵は余裕をかましてただそこに立っている。
そんな奴に痺れを切らしたのか、咲菜が口を開いた。
『今更何をしに来た!?貴様の配下はもういないだろう!』
「お前を殺しに、と言いたいところだが、違う」
『ふざけるな!さっさと用件を言え!』
「……お前の家から東に行ったところにある公民館に住民を監禁している。もうすぐ毒ガスが放たれるだろう」
みるみるうちに咲菜の瞳孔が開いていく。
右腕の傷からは止まった血がまた出てきて腕を赤く伝っている。
それに気づいていないのか否か、咲菜は痛そうな素振りも見せない。
ただ我慢しているだけなのかもしれないが。
「電気が満タンになると放たれるように設定してある。止める方法はただ一つ、コードを切ることだ。場所はそうだな……ステージ側、とだけ伝えておこう」
『随分とご丁寧に教えてくれるものだな。俺じゃ止められねェとでも言いたいのか?』
「さァな」
『……情報は確かなんだろうな?』
咲菜が問うと敵は頷く。
俺は総悟に咲菜の家族を護るよう指示を出した。
少しの間咲菜と敵は睨み合う。
先に動いたのは咲菜の方だった。
『副長、沖田隊長、真選組のみなさん。ここをお願いします』
「無茶だ咲菜」
『いいえ。副長は、私を誰だと思っているのですか?……白夜叉と呼ばれた銀時と渡り合える雛乃咲菜ですよ?大丈夫です、必ず戻ってきます』
「、咲菜!」
俺の制止も聞かず、咲菜は走り出した。
そのスピードは人間離れしたもので、あっという間に咲菜の姿は見えなくなった。
走り去るとき、一瞬だけだが咲菜の目に涙が見えた。
咲菜は、街の人をも本当に大切に思っているんだ。