believe-心-
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あの日から二週間。
咲菜は倒れた次の日に意識を取り戻し、入院することになった。
今ではもう傷はほぼ完治し、本人は動きたがっているが、しばらくは様子をみなければいけないらしい。
傷が開く可能性もあるらしく、まだ退院は出来ないそうだ。
「咲菜」
『副長』
「具合はどうだ?」
『問題ありません』
咲菜と目が合う。
俺も咲菜も逸らそうとはせず、しばらく見つめ合った。
その静寂を裂いたのは咲菜だった。
躊躇いがちに声を漏らす。
視線はまだ、互いに絡み合ったまま。
『私は、どうなりますか?』
「どう……とは?」
『妹ではありませんでしたが、私は人を殺めました。その罪を背負わなければならないはずです』
「……どうもなりゃしねェよ。時効だ、時効」
不満そうな顔をする咲菜の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
視線はいつの間にか外れていた。
ベッドに上半身を起こして座る咲菜をそっと抱きしめて、言葉を探した。
「あいつらは全員粛正された。咲菜や咲菜の家族、街の人たちを騙したり監禁した罪で死んでいった」
『それでも、人を殺めた方が罪は重い』
「俺は時効だと言った。近藤さんもそう言ってる。なら咲菜、お前ェはその罪を、人を殺めた事実を忘れねェで生きていけばいい。それがお前ェに与えられた罰だ」
『……、』
咲菜は静かに泣いているようだった。
だから俺は、咲菜が何か行動を起こすまでずっと抱きしめていた。
何分そうしていたかはわからない。
俺から離れて顔を上げたときには、咲菜は泣いていなかった。
ただ眉を下げて、今までの咲菜では考えられないくらいに情けない顔をしていた。
きっと咲菜は、罪を背負っていく覚悟を決めたんだ。
人を殺めたことをその心にしっかりと刻み込んで。