夕暮れも近くなってきた頃。
あたしと銀時は万事屋に戻ろうとしてた。
あたしが人混み苦手なんを知ってる銀時は、気をつかってくれる。
出来るだけ人の少ないとこを行く、という。
人の少ないところ少ないところを行くと、路地に出た。
あたしは、なんか嫌な予感がした。
けど銀時には伝えへんかった。
銀時もたぶん、わかってるやろうから。
「茜……俺から離れるんじゃねェぞ」
『うん』
路地の真ん中くらいを、通り過ぎようとしたときのこと。
前後から、物凄い大きな殺気を感じた。
その殺気が捉えてるのは、銀時やのーてあたしで。
銀時が木刀を構える。
あたしも、攻撃をかわせるように身構える。
徐々に殺気は近づいてきて、人がおるのが見えた。
10人はおるやろう。
敵が攻撃してくるのと同時に、銀時は戦い始める。
あたしはかわすのに必死になった。
「茜!」
不意に名前を呼ばれて、攻撃をかわしながら振り向く。
そしたら剣が宙に浮いてた。
正直、剣が宙に浮いてるのには驚いた。
でもあたしは、こっちに飛んでくるその剣をキャッチした。
その剣で、敵の攻撃から身を護ったりした。
『ッ!』
背後を取られた。
前に集中しすぎた。
背中を、右肩の下くらいから、斜めに腰のあたりまで斬られてもた。
余りの痛さに、あたしは声にならへん悲鳴を上げた。
「茜!」
すぐに銀時が駆け寄ってきてくれる。
そこからは、銀時はあたしを護るようにして戦った。
しばらく銀時は、あたしを庇いながら戦ってた。
けど数が多いんか、物凄い大変そうに見える。
『ぎんッ、と、き……ッ』
出来るだけ、銀時があたしを庇わずに戦えるように……。
と思って、立ち上がった瞬間のこと。
前から思い切り、剣があたしのお腹を貫いた。
剣が引き抜かれると、あたしはその場に倒れ込む。
「茜!茜ッ!」
銀時があたしに駆け寄ってきて、抱き起こしてくれる。
けどあたしの意識は、遠くなっていく一方で……。
銀時があたしに駆け寄ってくるのとほぼ同時に、敵は路地の奥へ消えていった。
「おい茜ッ!しっかりしろ!茜ッ!」
銀時の気があたしの名前を何度も呼ぶ中で、あたしは意識を手放した。
意識が離れる前に一瞬見えた銀時の顔は、今まで見たことないくらいに、不安そうやった。
薄れゆく意識の中であたしは、敵に見覚えがあることをずっと思ってた。
銀時に伝えんとあかんってことも、ずっと。