茜の瞼が閉じると、俺は危機を感じ、路地を飛び出した。
向かう先はもちろん、大江戸病院。
茜を抱えて、俺はひたすら走った。
息が切れようと走り続けた。
自分がどうなろうと、その時はどうでもよかった。
大江戸病院に着いて事情を説明すると、茜はすぐに、緊急治療室に運ばれた。
俺は廊下にある椅子に座って、ただ祈っていた。
茜が無事であるように、と。
しばらくして、茜が治療室から出てきた。
担架に乗ったまま、医師や看護師と共に。
医者は、傷は大体治療出来たと言った。
しばらく安静にしていれば治るだろうと。
ただ、茜の意識が戻らねェかもしれねェ、とも言った。
昏睡状態で、最悪の場合一生目覚めないかもしれねェと。
俺は、絶望の淵に立たされたような気分になった。
と共に、更に後悔が押し寄せてきた。
「茜……」
病院の個室に入れられた、茜をの名前を呟いた。
ベッドの脇にある椅子に座って、茜の手をぎゅっと握って。
だけど茜は、ぴくりとも動かなくて。
何処からか茜のことを聞いた、神楽や新八が部屋に来た。
俺は、何日も何日も、茜の傍で茜の手を握っていた。
少しは休めと言われた。
けど俺は、茜の傍から離れる気にはならなかった。
いや、なれなかった。
今俺がみずきの傍から離れると、もう一生茜に会えなくなるような気がして……。
その時俺は、茜がこんなにも好きなんだと感じた。
「目ェ開けてくれよ、茜……」
何度茜の名前を呼んでみても、何度茜にキスをしてみても、茜が目覚めることは、なかった。
茜がこうなっちまったのは俺の所為だ。
と、俺はひたすら自分を責めた。
「茜。なァ茜。俺茜に言いたいことあるんだけど。目ェ開けろよ。俺の名前呼んでくれよ……」
一週間くらい俺は、茜が目覚めると信じて、ろくに睡眠も取らず傍にいた。
人間には、限度ってのがやっぱりある。
俺は睡魔に負けて、茜の傍で寝ちまった。
茜の手を握ったまま、茜は目覚めると信じて。
俺の姫様は、あの日から眠ったまま。
早く、早くその瞼を開いて、俺をその目で捉えてくれよ……。