自然と瞼が上がる。
目に飛び込んできたんは真っ白な天井やった。
此処は何処なんか。
そう考える前に、あたしは手を握られてる感覚を覚えた。
起き上がって左を向いてみる。
そこには、あたしの手を握ったまま、椅子に座って銀時が寝てた。
『銀、時……』
「ん……」
あたしは、あたしの右手を銀時の右手に重ねた。
『っつ……』
腹部に痛みを感じて、あたしは顔を歪ませる。
と同時に、あぁ、そういえば……と、あの日のことを思い出した。
何度も何度も、夢で見た。
「ん……っ、茜……?」
あたしの名前を呼んで、銀時は目を開けた。
銀時と目が合った。
あたしを見て、驚いた表情を見せた銀時。
今まで眠っていた人が、起き上がっていたのだから。
「茜!」
『銀時っ』
あたしは銀時に抱きつく。
銀時はそんなあたしを、優しく受け止めてくれた。
「よかった、茜……。俺、もう一生、目ェ開けてくんねェかと思った……」
銀時が、あたしを抱きしめる腕の力を強くした。
苦しくなんてない。
『銀時……。あたしっ、あたしっ……。怖かった、怖かったよぉ……っ』
あたしの目から、自然と涙が零れてきた。
あの日必死に堪えてた恐怖が、一気に甦ってきて。
腹部の痛みなんて、気にならへんかった。
銀時は小さく、あたしに謝った。
すまねェ、と。
謝りながら、抱きしめててくれた。
「茜……」
『会いたかった、銀時……っ、会いたかった……っ』
夢の中のあたしがずっと考えてたことが、これやった。
“銀時に会いたい”
死にたくないとか、目を覚ましたいとかじゃなくて。
とにかくあたしは、銀時に会いたかった。
銀時の顔が見たくて、銀時の声が聴きたくて、銀時に名前呼んで欲しくて。
眠ってたあたしの中には、銀時のことしかなかった。
自分でもなんでかわからへんくらい、銀時のことが頭から離れへんくて。
あたしが泣き止んで落ち着いてから聞いた話。
あたしは十日くらい、ずっと眠ってたらしい。
お医者さんには、こう言われたみたい。
昏睡状態のまま目覚めへんかもしれへん。
と、眉間に皺を寄せて。
望み、涙。
銀時のことを考えると、止まった涙がまた溢れそうで。