君の中へ堕ちてゆく

□32
2ページ/2ページ




「わぁ、すっごいええ曲!これ、珠姫が作ったん?」

『そうやで!気に入って貰えたなら嬉しいな』

「おおきにな、珠姫。うちこの歌、むっちゃ大事にする」

『うん!』




これは……夢?

お姉ちゃんの誕生日のときや、これ。

そういえばあたし、お姉ちゃんに歌プレゼントしたっけ。

確か、そう、二曲くらい。



「さぁ 歌おう 一緒に
楽しいうたも 悲しいうたも
一緒に歌えば ほら
一つになれるでしょう?

声が重なり合うとき
きれいなメロディーが
紡がれるから
そのメロディーを
自在に操りましょう


さぁ 歌おう 一緒に
楽しいときも 哀しいときも
一緒に歌えば ほら
冷えた心解けてく

音が紡がれてくとき
かがやくコトバが
動き出すから
そのコトバを
自在に操りましょう」



この旋律、この歌詞……。

全部知ってる、聴いたことある。


そうや、これは……この曲は。



song of song

『誰っ!?』

「歌を、聴いて。貴女の歌を」

『歌を聴く……?』



聴いてて落ち着く、澄んだきれいな歌声。

懐かしい声。


あたしのこと知ってるみたいやったし、やっぱりあたしの知ってる人……?

お姉ちゃんの声じゃない、総悟の声でもない。

お母さんもちゃうし、お父さんもちゃう。

お婆ちゃんでもお爺ちゃんでもないし、おばちゃんとかおじちゃんでもない。


じゃあ、一体誰?



『なぁ!誰なん?あんたは、誰?!』



叫んでみても、答えは返ってこんかった。

ただ、頭の隅の方に、総悟とお姉ちゃんの声が聞こえた気がした。


――珠姫ーっ!

――どこにいるんでさァ、返事して下せェ!

――珠姫ーっ!

――珠姫!珠姫ーっ!


――お願いやから無事でおってよ、珠姫。

――珠姫、珠姫……っ!

――うち、珠姫が死んだらどうすればいい?

――生きて珠姫、絶対、殺されんで。


総悟……お姉ちゃん……。

あたし、どうしたらええんやろう。




夢の中で聴こえた、あたしの歌は誰が歌ってたんやろう。

あたしの歌を聴くって、どういうこと……?






(2009.11.15)


次の章へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ