君の中へ堕ちてゆく

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お姉ちゃんが歌ってくれたおかげで、あたしは一時的にやろうけど正気に戻れた。

あたしの歌を聴くって、このことやったんや。


懐かしいな、お姉ちゃんの歌声。

この曲はあたしが、お姉ちゃんにプレゼントした曲のうちの一つ。

曲名は、≪shine



「いつの日か二人で見た星空を
覚えていますか?
あのときは空が澄んでいて
星がきれいだった
流れ星が一つ 流れた」

『早く、総悟、あたしを斬って』

「……っ!」



あたしを斬るのをためらう総悟。

無理もないんやろうけど。

きっと総悟の中には、色んな感情が渦巻いてる。


表情が――。



『総悟が斬ってくれへんなら、あたしが、』

「珠姫っ!」



言うこと聞かへん体を無理矢理動かして、あたしは剣を振るう。

総悟にじゃない、あたし自身に。


右の腿から血が流れて、苦痛に顔を歪ませた。

……痛い。

けど、こうするしか、ない。



「やめろ珠姫!もし珠姫が死んじまったら、俺ァ、」

『こうするしかないの!ザーマス星人に操られたまま総悟殺すくらいなら、今此処で死んだ方がましや!』



足を、腕を、胴を、持ってる剣で傷つけていく。


あたしの意思で総悟を殺すならまだいい。

けどザーマス星人なんかに、総悟は殺させたくない。



「無情なくらい
星は儚く消えたけど
流れたときの輝きは
本物だから
共に行こう 闇の向こうへ」



歌が、終わる……。

お姉ちゃんの歌が……あたしの、歌が。

また総悟を傷つけてまう。

そんなん、そんなん絶対にしたくない。



『総悟!早く!』

「珠姫を傷つけるなんて、出来るわけねェだろィ!」

『お願いやから!もう、あたしの手で、誰かを殺したくない……。あたしは死なへんから、絶対死なへんから。信じて、総悟。あたしを信じて』

「珠姫……。……わかり、やした」



辛そうな、総悟の表情。

こんな顔させたくないし見たくない。

けど今はもう、そんなこと言ってる場合やない。

総悟を、ザーマス星人の魔の手から助けんと、あかん。




あたしの思い、総悟に伝わったよな?

伝わったから総悟はあたしを斬る決断をしてくれたって、思ってもええよな?






(2009.12.06)


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