believe-心-

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剣を手にするなんて、久しぶりだな。

あの時以来だ。

あの時、剣を捨てて銃を持ち替えて以来だ。


上手く扱えるかな?

……本能が、覚えていてくれればいいんだけど。


そう考えていると、総悟と呼ばれた人は私に飛び掛ってきた。


――キィィィィイン


剣と剣が交わる。

総悟と呼ばれた人は攻撃、私は防御。


私は総悟と呼ばれた人の剣を、自分が持っている剣で振り払う。

そうしてから、足で地面を蹴って後ろにさがる。


久しぶりに剣を握ったからか、それとも此の剣が私の剣じゃないからか。

何にせよ、戦いにくい。

まぁそのうち慣れてくるんだろうけれど。



「飛酉灯って言うんだってねィ。何してんですかィ。防御ばっかしてたら、一本取れやせんぜッ!」

『剣の使い方を思い出すのに、時間がかかっているだけだ』

「とか言って、本当は剣なんて、使えないんじゃねーんですかィ?」

『使い方を思い出したら、てめェなんて1秒で倒してやらァ』



また剣が交わる。


力と力の押し合いの中で、私たちは言葉を交わす。

私と総悟と呼ばれた人にしか、聞こえないような声で。


会話が終わると、互いが足で地面を蹴る。

剣と剣が離れ、後ろにさがった。



「攻撃、早くしてきてくだせェよ?俺ばっか攻撃してあんたは防御ばかり、つまんねーや」

『悪かったな。色んな記憶が入り混じって、どーも思い出せねーんだよ』



……総悟?

総悟ってもしかして、真選組一の剣の使い手である一番隊隊長の沖田総悟?


……え、嘘。

宣戦布告しちゃったよ。

んー、ま、いっか、どうせ一本取るし。


つーか私、なんでこんなことしてんだろ。

なんで真選組なんていう、面倒なところに入ろうとしてんだろ。

……あぁ、そうか。

ご飯食べれるからか。

沢山沢山、食べたいだけご飯食べれるからか。


別に土方十四郎を信じたわけじゃない。

私は誰も信じない。

だって人は、信じるべき存在(もの)じゃないから。


信じれば、私がおかしくなるだけ。

私が傷つくだけ。


だけど、もしかしたら私は、心の何処かで信じているのかもしれない。

土方十四郎のことを。

誰のことも信じないと決めていても、人は人を、信じてしまうのかもしれない。


……わからない。

“人を信じる”と言うことが。

其れがどういうことなのか。


人は人を信じて、どうするのだろう。

何をするのだろう。

何を思うのだろう。

何を感じるのだろう。


わからない。

信じる、という、たった3文字の言葉の意味が。




信じる……私にとって、其れは得体の知れないモノだ。






(2009.07.24)


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