believe-心-

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真選組に入隊してから、数日が経った。


初めて隊士の人たちと食事をしたときは、かなり驚かれた。

特特特盛りを完食してしまったから。


今日は、土方――じゃないや、副長に言われて、江戸の街の見廻りをしている。

もちろん一人だ。

副長には、誰か一緒に行かせる、と言われたけど、すぐに断った。

誰かと一緒だなんてごめんだ。



『あー、疲れた……』



私は路地に座り込む。

確か此処は、初めて副長と出逢った場所だ。


左側を見ると、いかにも怪しい奴らが四人程。

そうそう、あいつらの仲間が襲ってきたから、正当防衛として銃で殺したっけな……。


ってんん?あいつら?

……うげ、ヤバいかも。



「よォ、姉ちゃん。久しぶりだなァ。調子はどーよ?この前はよくも俺の仲間を殺やってくれたなァ」



聞き覚えのある声が、私の耳に届く。

紛れもなく、あのときのあいつらだった。



「詫びはきっちり入れてもらうぜェ?覚悟はもちろん、出来てるよなァ?」



ニヤリと笑って、男は言った。

その笑顔に、私は恐怖というものを覚えた。



『てめェら……ッ、何をする!離せ、このッ!離せっつってるだろッ!』



私は両側から二人の男に腕を封じられて、足を縄で縛られた。

目の前にいる男は、剣を持っている。


腕を封じられては、得意の銃も使えない。

足も縛られてるから、蹴ることも出来ない。



「まずは、此処からだよなァ?」

『……ッ!其処はッ!やめろ!』



男が持っている剣の先が向けられたのは、私の喉の下。

其処から真っ直ぐ、剣をおろし、上の服を、切るつもりだろう。

そうなれば……。



「おいおめェら……何やってんだァ?」



……!

この声は……。



『ひじか……むぐっ』

「はっ、こいつが土方十四郎か。怖くもなんともねーじゃねェか」



副長は剣を持っている男を、瞳孔の開いたその目で睨みつける。


鞘から抜いた剣を、男の喉元に近づけた。

その男はすぐに怯み、尻餅をつく。

呆気ないな、なんて考えていた。


不意に足の縛られている感がなくなる。

すると腕が解放され、気づけば副長の腕の中にいた。

私を襲おうとした奴らが、どうなったかわからない。



『土方とうs「大丈夫か?灯」

『…………』



何故だか、動けなくなった。

副長の腕の中が、とても温かくて。



「……灯?」

『大丈夫だ。離せ』

「嫌だと言ったら?」

『自力で抜け出す』



口ではそう言いながらも、このままでもいいと思っている私。

誰かに抱きしめられたのなんて、いつぶりだろう。



「灯……真選組、やめんなよ?」

『やめる理由が見つかんねーな』



突然の言葉だった。

本当に突然、副長は言い出した。

やめるな、と。


“やめる理由が見つかんねーな”

私のその台詞は、紛れもなく本音だった。


少しして、副長は私を離してくれた。

どうしてこんなことをしたかは、わからない。


これから、私はどうなるのだろう。

どんな運命を辿ってゆくのだろう。

どんな困難が待ち受けているのだろう。

どんなことを感じれるのだろう。

どんな幸せを、感じれるのだろう。


それは誰にもわからない。

だからこそ人生は面白いのだと、誰かは言う。


これからの人生が、楽しくなりそう。

と、そう思った。

土方十四郎に助けられて抱きしめられて、初めて。




life.人生。

これからの人生が楽しくなりそうだ。

と、何故そんなことを思ったのかは、さっぱりわからない。






(2009.07.24)


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