believe-心-
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灯に用件を伝えると、俺は食堂を出た。
向かうのはもちろん自分の部屋だ。
まだ仕事が残っているし、灯がそのうち来る。
『何の用だ、土方十四郎』
もうあの量の飯を食い終わったのか、灯が来た。
俺の部屋のふすまの向こうで、灯は言った。
「とりあえず入れ」
少し躊躇ったのか、ふすまが開くのに間があった。
だけど灯は入ってきた。
灯はふすまを閉めると、俺はなにも言っていないのに、適当なところに壁にもたれて座る。
『で、何の用だ?用がねェなら帰るぞ』
「万事屋となに話してたんだ?」
『万事屋……銀時か?』
「ああ」
灯黙ってしまった。
俺には話せねェようなことを、万事屋と話していたのだろうか。
なんかムシャクシャしやがる。
精神世界に、灰色のどんよりした雲がかかったかのようだ。
『……特になにも話してねェよ。ただ会って久しぶりだなと言っていただけだ』
「ならどうして万事屋連れて逃げた?」
『俺と銀時は旧友だぜ?久しぶりに会ったんだ。二人きりで話くらいしてもいいだろ』
「逃げるように万事屋を連れていく理由は?」
また灯は黙ってしまった。
俺はなにか間違っているのだろうか?
『それは「土方さん、近藤さんが呼んでやすぜ」
「……あぁ、わかった。灯、とりあえず今日のことはもう訊かねェ。だが次に怪しい行動を取ったら、問い詰めるから覚えとけ」
俺はそれだけ言って部屋を出た。
『くそっ、私がもっと強ければ……!』
なんて言葉を、灯が呟いたのも知らずに――。
今日の俺はなんか変だ。
灯と万事屋のことを訊いたり、それでムシャクシャしたり、一体なんなんだよ。
わけわかんねェ。
灯と万事屋がどんな話してようが、どんな関係だろうが、俺にゃ関係ねェじゃねェか。
灯と万事屋は旧友だ。
攘夷時代を共に戦った仲間だ。
どんな関係だろうとおかしくねェ。
ただの友達、仲間かもしれねェ。
恋人かもしれねェ。
もしかしたらそれ以上かもしれねェ。
俺には関係ねェこと。
俺にはどうでもいいこと。
そうやってわかってるんだよ、だけど……。
気になるもんは、気になる。