believe-心-

□19
2ページ/2ページ




一週間くらい経ったとある日のことだった。

また朝から、屯所内に灯の姿が見当たらなかった。

屯所内をを捜してみたが、何処にもいなかった。


今回は敢えて、街の中は捜さずにいることにした。

きっと灯は、捜されたいりするのは嫌いだろうから。



「……灯、」



って、俺なんで灯の名前呼んでんだよ。

ばかみてェじゃねェか。


……実際ばかか。

灯のことなんも知っちゃいねェのに、好きになんてなってんだから。


とにかく俺は、無我夢中で仕事をした。

前みたく。前以上に。

灯以外のことに気が向くように、ただひたすら仕事ばかり。

飯もとっとと食って、移動も早足で。

なるたけ、頭を使わない時間を長くしないようにした。


灯は、前と同じで夕方頃に屯所に戻ってきた。

戻ってきていたことはわかっていた。

だが仕事が残っていて、すぐに灯の元へは行けなかった。


毎回すぐに行っていたら、過保護な気がしなくもねェけど。



「灯、」

『なんだ、土方十四郎』



夕食が終わった頃に灯に話しかける。

そうすると、いつものあの返事が返ってきた。


相変わらずフルネームで俺を呼んでる。

てことはまだ、俺のことを信じてくれてはいないらしい。



「何処に『思い出の場所だ』



灯は俺が訊く前に、答えを言った。

驚いている俺をよそに、灯はさっさと食堂を出ていっちまった。


部屋に戻ってから、俺はずっと考えていた。

灯のことについて。


灯は一体何者なのか。

どうして攘夷活動をやめたのか。

思い出の場所とは何処にあるのか。


そんな感じで、とにかく灯についてだ。



「山崎」



夜俺は、山崎の部屋に行った。



「灯を、飛酉灯について、調べてくれ」

「……わかりました」



山崎は何も訊かずに、仕事を引き受けてくれた。


灯と山崎は、少しだけ話をしたことがあるらしい。

山崎は、灯に何か違和感を感じたと言った。

何かはわからねェとも。




調査を開始した。だから。

例えどんな過去があったとしても、全て受け入れよう。

好きってのァ、全て受け入れてこそ、だろ?






(2009.07.24)


次の章へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ