believe-心-

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次の日、昼を過ぎてから万事屋のもとへ出向いた。

咲菜を誘う為だ。



『、故郷へ?』

「あァ。何か手がかりがないかと思ってな。咲菜は、」

『行きます』



あっさりと返事が来た。

だけど咲菜の表情はとても辛そうで……。

連れて行きたくない、という思いに揺れた。


咲菜を真っ直ぐに見る。



「大丈夫、か?」

『……大丈夫です』



真剣な目を咲菜は向けてくるから、これは連れていくべきだという結論に達した。

咲菜は万事屋に行ってくると一言言って、万事屋を出た。


電車を乗り継ぎ、一時間程で咲菜の故郷へ着いた。

ふと見た咲菜は、懐かしむような、それでいて辛そうな表情をしていた。

駅から二十分くらい歩いて、咲菜の家に着いた。


咲菜は扉に手をかけて少し躊躇ってから、ガラガラガラ、と引き戸を開けた。



『ただい、ま、』



小さく声が響く。

中からは何も返ってこなかった。

玄関の状況からして、きっと誰もいないのだろう。


先程とは違って咲菜は迷いなくある部屋へ向かった。



「ここは?」

『私の部屋』



すっと襖が開かれる。

視界に入ってきたのは殺風景な十畳程の部屋。

箪笥とテーブルと押入れがあるだけであとは何もない。

咲菜が家を出てからずっと使われていないのか、どれも埃が溜まっている。



『副長、右手前から三つ目の畳を外してもらえますか』

「何かあるのか?」

『わかりません。母さんと決めていたんです、私たちだけの秘密のものはそこに隠そうって。お願いします』

「……あァ」



咲菜が襖の向かいの窓を開けに行く間に、俺は指定された畳を外した。

そこには一つの大きな壺。


しっかりと壺を掴み引き上げると想像した程重くはなかった。

自分の横にそれを置いた。

咲菜が歩み寄ってきて壺にかけられた紐を解いて蓋を開ける。



『これは……』

「何かあったのか?咲菜」



咲菜の手に握られていたものは白い紙。

封筒のようになっている。




そういえば、町に全然人がいなかったような気がする。

今回の件にそれも関わっているのだろうか……。






(2011.01.03)


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