この詩は誰のもとへ
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さっきから沈黙が続いている。
けど、この沈黙の空間も悪くはねえ。
なんつーか……。
今俺は日並の家にいて、日並の隣に座ってるんだなあ、ってことが、今更だけど実感出来る。
横目で日並を見ると、日並は膝の上に両手を置いていて、その手をぎゅっと握りしめて、俯いてベッドに座っている。
俯いているから、表情はわからない。
「日並は、いつ暇?」
『へ?』
「勉強、教えてくれんだろ?日にち決めねーと、さ」
『そだね。ちょっと、待って』
そう言うと日並は、ベッドにあがり、枕のある方とは反対側に行く。
ベッドの枠の向こう側に何かがあるらしい。
必死に手を伸ばして取ろうとしている。
やべ、日並って予想外にエロいかも……。
「日並」
『ん?あ、取れた』
「スカートん中……見えるぞ?」
『えっ?!』
驚いたような声を出す日並。
日並は、枠の向こう側に伸ばしていた身体を起こすと、慌てて両手で後ろ側のスカートを押さえた。
右手には携帯。
日並の顔は真っ赤だ。
『見てない?』
顔を真っ赤にしたまま、訊いてきた。
俺の方を向いて、恥ずかしそうに。
ヤバい、鯛焼き食ってる日並もだけど、今のも可愛すぎる。
「見えてねーよ」
俺がそう言うと、よかったと言わんばかりに、俺の隣っつーか、日並が座ってたところに日並は座る。
右手に持っていた携帯を開いて、右手と左手を使って携帯をいじりだした。
少し経つと、日並は携帯の画面から顔を上げ、口を開いた。
『今のところはいつだって大丈夫。阿散井くんは?』
「俺もいつでも」
俺の言葉に、日並はまた携帯の画面に目線を落とす。
『とりあえず、もうすぐ7時だし、ご飯でも食べながら話そうよ』
「飯、いいのか?」
『うん。そんなに美味しくないと思うけど、御馳走する』
「サンキュ」
初めて話したときとか、此処に来てすぐのときより、日並は俺に慣れてくれたんじゃねーかなと思う。
最初は話すとき、単語が多かった。
けど今は、文になっている。
それが俺に少し慣れた証だと、俺は思う。
勝手な思い込みかもしんねえけど。
日並のことをもっと知ってみたいと思うようになった。
まだ日並のことは全然知らない。
だけど、このままずっと一緒にいたいと、思うようになった。
日並の隣にいる空間は、自分の家にいるときのように落ち着く。
ベッドに寝転んでいるときのように安らげる。
何故か安心出来る。
其処は、日並の隣は、何故か素の自分でいられる。