記念企画夢
□“想い”を超えるもの
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知っていた。
俺と真白のことは、全て。
越前真白じゃないってことも、俺と血が繋がってないってことも、幼い頃に真白はウチに預けられたってことも。
知っていたけど、なにも言わなかった。
口にすれば、真白が離れていきそうで……。
今まで、全て知らないフリをして過ごしてきた。
俺と真白が、血の繋がっていない兄妹だと言うことも、俺が真白を好きなんだってことも。
ただ俺は、それらを認めるのが怖かった――。
ふと自然に、6時過ぎに目覚めたら一階から聞こえてくる、リズムよくトントンと言ってる包丁の音。
その音を聞きながら、俺はまた眠りにつく。
『兄ーッ!朝だよ!』
アラームで目が覚めて、布団の中でボーっとしてたら、真白の声が聞こえてきた。
俺はもそもそと布団から出てパジャマを脱ぐ。
パタパタと階段を上がってくる、スリッパの音が聞こえたかと思うと、バンッと勢いよく部屋の扉が開いた。
『おはよう兄!』
後ろからガバッと抱き着いてきた真白。俺は上半身裸の状態。
「おはよ」
『兄の為に朝ご飯作ったからね、早く下りてきてね』
俺にそう言うと、真白は俺から離れて一階に下りていった。
俺はいつもと同じペースで制服に着替えて、荷物を用意して、一階に下りた。
『遅いよ兄。せっかく兄の為に朝ご飯作ったのに。冷めちゃうじゃん』
「ごめんごめん」
『まぁ兄だから許してあげる。ちょっと待っててね』
制服の上にエプロンを着た真白が、俺に駆け寄ってきたと思ったら、すぐにキッチンへ戻っていった。
俺は椅子に座ってテーブルを見渡した。
向かい2つは洋食が並んでるのに、俺の前と隣は、和食が並んでる。
『どうぞ』
「サンキュ」
『兄、和食好きだもんね』
手早くエプロンを脱いで椅子の背にかけると、真白は椅子に座った。
二人で一緒にいただきますを言って、二人同時に食べ始めた。
『もう、遅いよ兄。遅刻したらどうするのさ』
「真白が行くの早いだけだって」
そんなことないよ、って真白は言うと、歩き出した。
こんなのがいつもの朝、いつもの風景。
真白は子供っぽいけど小6で、家事を全部一人でやってのける程のしっかり者。
途中まで真白と一緒に道を歩いて、別れた。
俺は真白の曲がった道を、真白の後ろ姿を、少しだけ見つめていた。
真白に、伝えることの出来ない想いを馳せながら。
「どうすればいいんだろ、真白……」
誰にも気づかれないように小さな声で、一人授業中に呟いた。
もう、想いを留め置くことは出来ないかもしれない。
『お疲れ、兄。はい、ファンタ』
「ありがと真白」
部活後、制服に着替えて校門に行くと、真白が待っていた。
真白はいつもこうして待っててくれる。
「あぁ〜っ!おチビの妹だ〜!」
「いつ見ても可愛いよなぁ真白ちゃんは」
前者は菊丸先輩、後者は桃先輩。
二人の後ろには、先輩たちが集まっている。
なんかレギュラー陣ばっかだけど。