記念企画夢

□ただ溢れる“好き”のままに
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俺には、俺と双子の妹と双子の妹がいる。

……わかりにくいな。

つまり、俺に兄妹は3人いて、そのうち一人が俺と同い年で、あとの二人が小学生で双子なんだ。

俺と同い年の妹が真白で、小学生の双子が遊子と夏梨。

俺と真白が双子で、遊子と夏梨が双子。


妹ばかりの兄妹のいる俺には、一つ悩みがある。

それは……好きになっちまったことだ。

同い年の妹――真白のことを。


血が繋がってないことは、俺しか知らない。




ある秋の日。

その日は妹である真白と、買い物に行く予定だったけど、雨が降ってきたからやめにした。


だから今は、俺の部屋で俺と真白は話をしている。



『ねぇ一兄。今日買い物行けなかったからさ、次行くのいつにする?』

「来週くらいに行くか?俺は明日とか明後日でも大丈夫だけど」



ベッドの上に並んで座って会話をする。


俺は、心臓の音を真白に聞かれていないかどうか、気が気じゃねえ。



『一兄……』

「なんだ?」

『あのさ、私たち……やっぱりいいや。なんでもない、気にしないで!』



俺たちがどうかしたのか?

訊こうかと思ったけど、やめにした。

真白がなんでもねえって言うなら、なんでもねえんだ、きっと。


俺の部屋に沈黙が流れた。

扉も窓も閉め切っているし、今日は家に俺と真白しかいねえから静かだ。



『っ?!一、兄……?』

「あ……、悪ィ、その、違うんだ!なん『一兄』



しばらく沈黙が流れていくと、俺は無意識に真白にキスをしちまった。


真白への好きという想いが溢れて、止まらなかった。



『私と一兄は、血が繋がってない、よね?』



俺に訊くかのように、真白は言った。


まさか知っていたなんて思いもしなかった。


真白の言葉に、俺は驚いたけど頷いた。



『なんとなく、気づいてたんだ。近所のおばさんとかに、“一護くんの妹?可愛いね”って言われたことは何度もあるけど、“一護くんに似てるね”って言われたことは一度もないんだ。だから、実は血が繋がってないんじゃないかって。私の憶測だったけど』



「そうだったのか……。ごめんな、今まで黙ってて」

『ううん、いいの。私、一兄のこと大好きだから』



俺の唇に、触れるだけの短いキスをした真白を、俺は強く抱き寄せた。

ただ溢れる想いのままに、真白を抱きしめて、キスをした。



『ありがとう、一兄』

「礼を言うのは俺の方だ。ありがとな、真白」



くしゃくしゃっと真白の頭を撫でてやると、真白は照れくさそうに、でもとても嬉しそうに笑った。




真白への好きという想いが溢れ出る前に、真白に好きだということを伝えれてよかった。

あれ以上は、もう抑え切れなかったと思う。

とは言っても、なにも言わずにキスしちまったわけなんだけど。


いつから、真白が傍に、妹としていたかはわからねえ。

いつから、真白のことを一人の女として見て、好きになったかさえもわからねえ。


ただ気づけば傍にいて、気づけば好きだった。






(2008.11.18)


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