記念企画夢
□空の下に交錯した
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やっぱ理性を保つのって難しいと思う。
好きな奴――っつっても妹なんだが――にあんなことされると、流石にキスの一つや二つくらいしちまうだろ。
理性を保つこと、つまり欲望を抑えることにも、限界ってのがある。
俺は限界を超えたわけじゃなくて、無意識にしちまった。
俺は、血の繋がらない妹である真白に、特別な想いを抱いている。
そう。俺は真白のことが好きだ。
それは、君と稽古をしていたときのこと。
非番の日、真白に稽古をつけてくれないかと頼まれた。
もちろん兄妹だし部下でもあるから、OKした。
陽が高くなってきた頃を適当に見計らって、俺と真白は休憩を取り、お昼にした。
『やっぱり兄ちゃん、強いね。流石副隊長』
「真白こそ、前より随分強くなったじゃねーか」
『そう?ありがと』
真白はふわりと俺に笑ってみせた。
飯を食い終わって俺が寝転ぶと、真白は立ち上がって、近くを歩く。
『ねぇ兄ちゃん。私、昔はさ、兄ちゃんのこの手に育てられたんだよね。この手で私の手を握ってくれたんだよね』
「ああ」
『その頃は、兄ちゃんもまだちっちゃかったんだよね。不思議だな〜』
「そうだな」
ついさっきまで歩いていた真白が俺の隣に座って、俺の右手を両手で握って言う。
このままグッと真白を引き寄せて、抱きしめたくなる衝動を、必死で抑える。
真白は俺の手を離してまた立ち上がると、両手を上に伸ばして、ひとつ伸びをした。
「真白」
『ん?』
「稽古、再開するか?」
『んーん、まだもうちょっと休んでよう?』
向こう――森の方をじっと見たまま、真白は言った。
わかった、と俺は言うと、真白に向けていた視線を、空に戻した。