記念企画夢
□新しい未来が、今
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言うと決めた。
俺は、真白に言うと決めたんだ。
俺とは血が繋がってねえと。
それを言ったら、想いも告げる。
真白が好きだと、ずっと前から好きだったと。
真白は、俺と血が繋がってねえことは知らねえ。
今までずっと、俺を本当の兄だと信じて、真白は過ごしてきたに違いねえ。
それを裏切ることになるのかもしれねえ。
けど俺は伝えなきゃなんねえんだ。
両親と、真実を伝える、と約束したから。
もし俺が真白を好きになったとしたら、真白に俺と血が繋がってないという真実を伝える。
昔、まだ真白が幼かった頃に、俺と俺らの両親が交わした約束だ。
その約束を果たすときが今、来た。
「真白」
『兄様。どうしたの?』
「話がある」
『お話?』
俺らは互いに母子家庭・父子家庭で、親が再婚した。
だけどある日、フラリと何処かへ行っちまった。
“離婚しました。貴方たちは戸籍上は兄妹ではなくなったからね”という置き手紙と、大量の金を残して。
「驚くと思うけど……とにかく聞いて欲しいんだ」
『兄様が聞けというなら、私は何でも聞くよ』
昔から住んでる、今はもう住みなれた家。
その家の二階の左奥の部屋――幼かった頃に真白と二人で使っていた部屋。
相変わらず残っている、小さなベッドに二人でもたれかかって座っている。
「俺は昔……まだ両親がいて、真白が幼かった頃、親と約束をしたんだ。真白に、真実を伝えるって」
『真実?』
「俺と真白は、血が繋がってねえ。俺らが幼かった頃に、親が再婚して出来た兄妹なんだ。今はその親も離婚しちまったから、戸籍上でも兄妹じゃなくなっちまった」
『私たちは今、兄妹じゃない……?』
俺は、真白の小さな手を握った――真白の方を向いた。
真白は目を丸くして驚いている。
状況を掴みきれていないともとれる。
「真白。俺は……俺は、真白が好きだ」
『兄様……』
真白は目を閉じたかと思うと、すぐに目を開いて満面の笑顔になって、俺に抱きついてきた。
『ありがとう、兄様。私兄様のこと大好き』
「真白、でも俺たち今は……」
『兄妹でもない家族でもない。赤の他人だって言いたいの?バカだなぁ兄様は。兄妹は兄妹でしょ。家族じゃないんなら、また家族になればいいじゃない。こうやってさ、想いはお互いに通じたんだから』
「……たまにはいいこと言うじゃねえか、真白も」
たまにはってなによそれ!と膨れっ面になる真白に、キスをした。
唇を離すと、真白は思ってたより真っ赤で、思わずまたキスをしちまった。
真白が、俺のことを“恋次”って呟いたのを、俺は聞き逃さなかった。
兄様のバカ!
と言いながらも、キスを拒んだりしない真白。
しかも何度キスをしても顔は真っ赤で、こんなに可愛い妹は他の何処にもいねえだろ。
こんなに可愛い妹が彼女だって兄貴もまた、いねえだろ。
父さん、母さん。
約束はきっちり守ったからな。
これでよかったんだろ?
それから……真白のことはこれからもずっと、俺が護っていく。