記念企画夢

□新しい未来が、今
1ページ/1ページ




言うと決めた。

俺は、真白に言うと決めたんだ。

俺とは血が繋がってねえと。

それを言ったら、想いも告げる。

真白が好きだと、ずっと前から好きだったと。


真白は、俺と血が繋がってねえことは知らねえ。

今までずっと、俺を本当の兄だと信じて、真白は過ごしてきたに違いねえ。

それを裏切ることになるのかもしれねえ。


けど俺は伝えなきゃなんねえんだ。

両親と、真実を伝える、と約束したから。




もし俺が真白を好きになったとしたら、真白に俺と血が繋がってないという真実を伝える。

昔、まだ真白が幼かった頃に、俺と俺らの両親が交わした約束だ。

その約束を果たすときが今、来た。



「真白」

『兄様。どうしたの?』

「話がある」

『お話?』



俺らは互いに母子家庭・父子家庭で、親が再婚した。

だけどある日、フラリと何処かへ行っちまった。

“離婚しました。貴方たちは戸籍上は兄妹ではなくなったからね”という置き手紙と、大量の金を残して。



「驚くと思うけど……とにかく聞いて欲しいんだ」

『兄様が聞けというなら、私は何でも聞くよ』



昔から住んでる、今はもう住みなれた家。

その家の二階の左奥の部屋――幼かった頃に真白と二人で使っていた部屋。


相変わらず残っている、小さなベッドに二人でもたれかかって座っている。



「俺は昔……まだ両親がいて、真白が幼かった頃、親と約束をしたんだ。真白に、真実を伝えるって」

『真実?』

「俺と真白は、血が繋がってねえ。俺らが幼かった頃に、親が再婚して出来た兄妹なんだ。今はその親も離婚しちまったから、戸籍上でも兄妹じゃなくなっちまった」

『私たちは今、兄妹じゃない……?』



俺は、真白の小さな手を握った――真白の方を向いた。

真白は目を丸くして驚いている。

状況を掴みきれていないともとれる。



「真白。俺は……俺は、真白が好きだ」

『兄様……』



真白は目を閉じたかと思うと、すぐに目を開いて満面の笑顔になって、俺に抱きついてきた。



『ありがとう、兄様。私兄様のこと大好き』

「真白、でも俺たち今は……」

『兄妹でもない家族でもない。赤の他人だって言いたいの?バカだなぁ兄様は。兄妹は兄妹でしょ。家族じゃないんなら、また家族になればいいじゃない。こうやってさ、想いはお互いに通じたんだから』

「……たまにはいいこと言うじゃねえか、真白も」



たまにはってなによそれ!と膨れっ面になる真白に、キスをした。

唇を離すと、真白は思ってたより真っ赤で、思わずまたキスをしちまった。


真白が、俺のことを“恋次”って呟いたのを、俺は聞き逃さなかった。




兄様のバカ!

と言いながらも、キスを拒んだりしない真白。

しかも何度キスをしても顔は真っ赤で、こんなに可愛い妹は他の何処にもいねえだろ。

こんなに可愛い妹が彼女だって兄貴もまた、いねえだろ。


父さん、母さん。

約束はきっちり守ったからな。


これでよかったんだろ?


それから……真白のことはこれからもずっと、俺が護っていく。






(2008.12.16)


次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ