記念企画夢
□胡蝶蘭
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今は遠いところに住んでいる真白。
昔、孤児だった俺ァ真白に――華紀家に拾われて、真白と一緒に過ごして、いつの日か礼だけ残してフラリと出ていった。
それから攘夷志士として戦って、戦いからは足を洗って今に至る。
万事屋になってからだいぶ経った。
地味でアイドルオタクの新八、大食いでドSな神楽、でっかい犬の定春が万事屋のメンバーだ。
いったい真白は今……。
なにをしているのかと、最近気になりだした。
新八もいない神楽もいない定春もいない。
誰にも起こされずにゆっくり寝れる。
なんて思いながら眠りについて、知らねェ間に次の日になってて、そしたらチャイムの音で起こされて。
まァそれが昼だったからよかったものの、朝だったら機嫌悪かっただろうなァ、なんて俺ァ考えた。
でも玄関を開けて訪れた主を知った俺ァ、コイツだったら朝からだったとしても、機嫌悪くなんなかったな、なんて考えを改めた。
「で、どーしたんだ、真白。なに?兄ちゃんに会いたくなったの?」
『そんなとこかな。銀兄に話したいことがあって』
そう、突然訪れたのは、妹である真白。
とは言っても、血は繋がってねェんだけど。
「話したいこと?」
『うん。本当はさ、銀兄の誕生日に話したかったんだけどさ、誕生日来る前に銀兄、どっか行っちゃったんだもん』
「悪ィな。世話んなったのに、いきなりいなくなっちまって」
『いーよ別に。だってさ、こうしてまた会えてさ、話出来てるじゃん』
昔から、真白はこうだった。
謝ればすぐに許してくれて、そのことについて詳しく触れずに、そっとしておいてくれる。
ただ興味がねェだけなのか、相手に気を配っているのかはわかんねェけど。
『でさ、銀兄』
「なんだァ?」
『結婚しよう』
「おォ、結婚かァ。……って結婚?!俺と真白が?!」
真白は知らねェハズだ、俺と血が繋がってねェってことは。
俺ァ真白の両親に、俺と血が繋がってねェことは言わねェでくれ、って頼んだ。
だから真白が知るハズはねェんだが……。
「俺ら兄妹だよ?結婚なんて出来『知ってるんでしょ、銀兄は』
『母さんと父さんに問い詰めたら、教えてくれたよ。私と銀兄は血が繋がってないって。だから私、決めたの。銀兄が好きだから、銀兄に好きって伝えるって。銀兄、返事、聞かせて?』
「知ってんなら、隠す必要もねェってわけか。俺ァ真白のこと、好きじゃねェ」
『え……?』
今までは向かい合って座っていたから、俺ァ真白の隣に移動する。
驚いている真白に、キスを落とした。
「愛してる」
唇を離して真白をぎゅっと抱きしめて、耳元で囁いた。
真白の耳が赤くなったのが、少し見えた。
『銀兄……』
「結婚、しようぜ」
真白は小さく頷いて、俺の背中に手を回した。
新八たちが帰ってくる気配は、まだまだねェ。
真白は、今まで俺が何をしていたかなんて、一切訊いてこなかった。
別に話すのが嫌ってわけじゃねェし、話したら何かなっちまうとかでもねェ。
だからって自分から話そうとも思わねェ。
きっと何も訊いてこなかったのは、真白なりの優しさだ。
新八とかが帰ってくると真白は、自己紹介をしたあとすぐに、俺と結婚することを言っちまった。
まァ別にいいんだけどよ。