記念企画夢

□ただ共に
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俺が真白の前で、自分の考えていることを伝えるなんざろくにしたことがねェ。

この世界をぶっ潰すってことァ何度も言ったが、それ以外はほとんど言ったことがねェ。

真白も訊いてこねェ。


俺ァ兄妹なんざいらねェと思ってた。

けど真白は俺を“兄”と呼んだ。

今では互いに、血が繋がってねェとわかってる。

形だけの兄妹。

俺らにはこれが似合ってるだろう。


いつどこで出逢ったかは、互いに覚えてねェ。




季節になんて興味などなかった。

だが朝目が覚めてみるとやけに寒くて、外に出ると雪なんてモンが降ってやがった。

通りで寒いわけだ。


外にいても寒いだけで、なにもすることァねェから、部屋に戻ると、其処には真白がいた。



「何してる」

『兄様を待ってた』

「何故だ」

『お話したかったから』



真白が俺の部屋にいる理由は、大抵これだ。

俺と話がしてェから。


何度か違ったときもあった。



「真白」

『なに?』

「俺ァこの下らねェ世界をぶっ潰す」

『うん』



薄暗い俺の部屋には、俺と真白の声しか響かねェ。

外の音も聞こえねェし、とにかく何も聞こえねェ。



「だが……俺ァ真白と共にいてェ」

『兄様……?』

「この下らねェ世界をぶっ潰したら、真白と共にいれねェ。どうしてだろうなァ。俺ァ最近、よくそう思う」

『大丈夫だよ、兄様。兄様の好きなだけ、この世界を潰して。この世界が潰れようと潰れまいと、私は兄様と一緒にいるから』



俺は真白に口づけた。

真白は何も言わず、ただ受け入れてくれた。


こんなに真白に自分の気持ちを話したのは、初めてだ。



『だから、ね、晋助?安心して。私は何処にも行かない。晋助の傍にいるから』




俺も真白も、互いに気持ちを言わないで過ごしてきた。

それは、言わなくともわかるからだ。


俺ァ真白が、俺のことを好きだってことを知ってる。

真白も俺が、真白を好きだということを知ってる。


俺が今日真白に気持ちを伝えたことは、真白にとっては驚くことだったみてェだ。


この下らねェ世界をぶっ潰すのに、躊躇いなどいらねェ。

思うままにぶっ潰す。






(2008.12.20)


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