記念企画夢
□夢の中の人
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私がまだ十五歳で、親と一緒に暮らしていた頃のこと。
いつの日からか、私は毎日夢を見るようになっていた。
その夢にはいつも同じ男の人が出てきて、私はその人とずっと話をしたりしていた。
男の名は“高杉晋助”といった。
そう、私が今いつだって一緒にいる高杉晋助のことだ。
私が晋助と出逢うまさに前日、こんな夢を見た。
其処は川のすぐ側にある桜の木の下。
桜の木は、月明かりにライトアップされていて、桜の木には晋助がもたれかかっていた。
そのときの晋助は本当に綺麗で、夢の中で私は、声をかけるのを躊躇っていた。
少し……いや、長いこと、私は晋助に見とれていた気がした。
一見ミスマッチのように思える、晋助と桜の組み合わせが、余りにも綺麗で、全然ミスマッチなんかじゃなくて、寧ろ誰よりも似合っていて。
そのとき晋助に、どれくらい見とれていたかはわからない。
ふと我に返ったときには、既に晋助の腕の中にいた。
「真白」
『ん?』
「明日、此処に来い」
『……わかった』
耳元で、そう囁かれた。
こんな声、晋助以外誰も出せないんじゃないかってくらい、甘い甘い声で。
桜の花びらが、雨のように降っていた。
月明かりに輝いた、桜の花びらが。
「もし真白が来なかったらよォ」
『私が、行かなかったら?』
「どんな手を使ってでも、真白を奪いに行ってやらァ」
『うん』
壊れてしまうんじゃないかと思うくらい、強く抱き締められた。
だけど不思議と、とっても優しく包み込まれているような感覚だった。
夢を見た次の日、私は夢の場所へと向かった。
夢の中でしか行ったことがないの場所だったけれど、何故か自然と足が動いた。
人通りの少ない、ひっそりとした場所だった。
その日は私の誕生日で、親に新しい着物を買ってもらった。
だからその着物を着て、晋助の元へと行った。
「真白」
名前を呼ばれて、私は声のした方を見た。
そこには、前日の夢のように、桜の木にもたれかかった晋助がいた。
ただボーっと周りを眺めながら歩いていて、私は晋助がいることに気づいていなかった。
晋助は、夢で見ていたまんまの晋助だった。
だけど……夢で見るよりも、更にかっこよかった。
『晋、助、』
私が晋助の名前を呼ぶと、不意に晋助にキスをされた。
いつもいつも、決まってキスをする直前で夢から覚めてしまっていた。
だけどこれは夢じゃない。
現実なんだ。