記念企画夢

□足りないくらいありがとう
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とある部活がお休みの日曜日の日、越前くんの家にお呼ばれされた。

越前くんが私の家まで迎えに来てくれて、二人で歩いた。


その日越前くんの家は誰もいなかった。

だから、越前くんと二人きり。


なんだかやけにドキドキして緊張した。

だけど私には、越前くんに伝えなきゃいけないことがある。

好きってことを伝えるわけじゃ、ないんだ。



『リョーマ、』

「何?」

『ありがとう』

「真白?」



ただ伝えたくなったんだ、この言葉を。

だって、とっても素敵な言葉でしょう?


ありがとう、って言われて、嫌な気分になる人なんていない。

いるとするならば、その人はどうかしてる。



『伝えたくなったの』

「いなくなるとかじゃ、なくて?」

『うん。ただなんとなく、伝えたかったの』

「そっか」



やっぱり越前くんの家はとっても落ち着く。

自分の家にいるときとはまた違うのだけれど、本当に落ち着く。


不意にカルピンが私の膝に飛び乗ってきて、そのまま丸くなって寝始めた。

カルピンはふわふわで、触ってて気持ちいい。



『ありがとうって、素敵な言葉でしょう?』

「そう、だね」



カルピンを撫でながら、私は言った。

越前くんもカルピンを見てる。


少しの間カルピンを触ってから越前くんを見ると、目が合った。

自然とってわけじゃない。

どっちかと言えば、越前くんが強引に、だと思う。

キスを、したんだ。



『あのね、私、あのときリョーマが話しかけてくれて、本当に嬉しかったの』

「あのとき?」



真っ赤になってるはずの顔を隠すように、私は俯いた。

だけど越前くんは、見えてると思う。


私は、カルピンをただじっと見ていた。



『うん。あの日から、毎日が楽しかったんだ。だから、ありがとう』

「俺も、ありがとう」



越前くんのその言葉に、越前くんに目線をやってみる。

今度は自然に、キスを交わした。


なんだか、越前くんが“ありがとう”だなんて、似合わない。

越前くんは“サンキュー”って言う方が似合ってる気がするな。

でも、似合うも似合わないも、関係ないね。



『一回や二回じゃ、言っても足りない気がするなぁ』

「真白がいてくれれば、俺はそれでいいよ」



恥ずかしい台詞をサラッと言ってのける越前くんが、ちょっと羨ましかったりする。

きっとこれからも、何度もこんなこと言われるんだろうなぁと思う。




私はいま、とってもとっても、“幸せ”です。

今までも幸せだったけれど、今が一番“幸せ”です。

越前くんと関係を持てて、本当に“幸せ”です。






(2009.08.22)


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