記念企画夢
□「やめちゃえば、あんなやつ」
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校舎裏でとある有名カップルがキスをしているのを酷く顔を歪めて苦しそうに見つめる真白を見つけた。その二人が去ってからも真白は二人がいた場所をじっと見ていた。
『何するの、リョーマくん』
「真白があんまり辛そうだから見てらんなくて」
『いいよそういうの、私は覚悟してるんだから』
「しきれてないんじゃないの」
真白の腕を引っ張って抱きしめた。真白は驚きも嫌がりもせずにただ俺の腕の中にいる。酷く泣きそうな顔をしていた割にはしっかりと話す真白に俺の方が驚いた。今にも泣き出しそうな震えた声で話すと思っていた。
『そんなことない、好きになったときにはもう二人は付き合っていたから』
「それでも好きなんだから、あんなの見て覚悟が揺るがないわけないでしょ」
『多少は揺らいだかもしれないけれど、今はもう変わらない』
「ならそんなに辛そうな顔しないよね」
少し真白を話して真っ直ぐ目を見据えた。今もまだ酷く顔を歪めて苦しそうな表情だ。俺の言葉に真白は黙ってしまって、だけど俺から視線を逸らそうとはしない。しばらく見つめ合ったままでいると真白の目から涙が零れて頬を伝った。
「やめちゃえば、あんなやつ。真白にはあんなの似合わない」
『出来るなら嫌いになりたいよ。だけど出来ないの……』
「……じゃあ俺が、嫌いにならせるよ」
『リョーマ、くん、』
もう一度真白をぎゅっと抱きしめた。真白は俺に体を預けて静かに泣いた。それでも泣き止んだあと、真白は辛そうな顔で俺に笑顔を向けた。やっぱり俺じゃ駄目なんだと改めて思った。