記念企画夢

□「……誓うか?」
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甲板に出て船の縁(へり)に立っていた。海風が髪を揺らして今にもこの海に飛び込んで青の底へ沈みたくなる。それを晋助に言えば珍しく本気になって止められた。死ぬなと本気で哀しそうな表情をして言った。



「またんなとこにいんのか、真白」

『うん、死にたいなって』

「死ぬなと前に言ったはずだ」

『聞いたよ、珍しく本気だったよね』



腕を引っ張られて縁から降ろされる。そのまま晋助の腕の中へ。ふわりと晋助の匂いが鼻腔を掠めて私の体中に広がっていく。その匂いに安心して私は晋助に体を預けた。もちろん晋助の背中に緩く腕を回して。



「何故真白はそこまでして死にたいと思うんだ」

『私青が好きなの。濃い青が。だからじゃないかな、私も青になりたいって願ってしまうの。その矛先が海に向くんだと思う』

「……本音か?」

『もちろん』



だけど晋助と一緒に生きていたい、そんな矛盾が今私の中では一つの大問題として生じている。どちらも私にとっては喉から手が出る程に望んでいることだから。きっと今私が生きているのは晋助が止めてくれるからだ。



「これは、俺の本音だ」

『うん』

「俺ァ真白を愛している。だからこそ真白が必要だし真白が死んだらそれこそ俺ァこの世界を今すぐにでもぶっ壊すだろう。真白がいねェと全ての事柄が意味を成さねェんだ」

『……そ、か』



抱きしめられているから晋助の表情はわからない。ただきっと、真剣な眼差しで今にも泣き出しそうな情けない表情をしていると私は思う。晋助、と呟くように名を呼ぶと晋助の顔を見る暇もなくキスをされた。



「志を成し遂げねェまま、真白と共に死ぬのは嫌なんだよ」

『ありがとう晋助。私もう死にたいなんて思わない』

「……誓うか?」

『うん、誓う。晋助のこの心に誓う』



もう一度キス、強い抱擁。晋助の言葉で私の中で重大な問題だった矛盾が薄れていった。青になりたいという願望より晋助と共に志を成し遂げたいという願望上回ったからだ。晋助は、いつだって私の命の恩人だ。






(2011.03.15)


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