脱色
□α−白い部屋
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こんなにもすぐ傍に、近くにいるのに、それなのに手を繋ぐことも、直接声を聞くことさえも出来ねえ。
出来るのは、見ることだけ。
眺めることだけ。
俺たちの間に立ちはだかっているのは、たった一枚のガラス。
強化ガラスみたいで、なにをしても割れねえ。
部屋にあるのは、真白だけに繋がってる無線機と、布団と机だけ。
だからって此処は刑務所じゃねえ。
此処は一体、何処で、どんな場所なのだろうか。
目覚めたら俺は、其処にいた。
辺り一面真っ白。
見渡して見つけた机も、無造作に敷かれた布団も。
俺のいる部屋にあるものは全て白一色だ。
違う色があるのは、俺だけ。
俺の着ている服だけ。
ふと左を見てみると、すぐ横にガラスがあった。
そのガラスの向こうに、アイツが、真白がいた。
気を失っている。
ガラスを叩けば起きるかと思って、ガラスを叩こうと右手を伸ばすと、ガラスを叩く前に真白が目を覚ました。
『 』
「真白!」
真白が何かを言うけれど、なにを言っているのかはわからない。
だけど、酷く哀しい顔をしながら、ガラスを必死に叩いている。
俺はもう一度部屋を見渡してみた。
「これは……無線機か?」
部屋の中を見渡して、机の上に見つけた機械。
見たところ無線機みたいだ。
真白を見てみると、こっちを見ている。
それをいいことに、ジェスチャーで無線機が机の上にあることを伝えると、真白は少し戸惑ったみたいだけど、ちゃんとわかってくれた。
「真白、聞こえるか?」
『うん、聞こえる』
適当にいじってみると繋がった。
真白にもその方法を教えたら、すぐにわかってくれた。
『修兵』
「どうした?」
『此処、何処かな。私たちどうなるんだろう』
「わかんねえ。けど真白になにかあったら、絶対なんとかして護ってやる」
『ありがと』
気がつけば此処にいた。
だから、俺らがどうやって此処に来たのかも、どうして此処にいるのかも、此処が何処かさえもわからねえ。
これからどうすればいいのか、これから俺らはどうされるのか、此処はなんなのか、此処に俺ら以外の人がいるのか。
疑問が沢山ある。
『怖いよ修兵……』
「大丈夫だ、俺がついてんだろ」
お互い背中合わせにガラスにもたれて、無線機で話をする。
表情こそわからねえけど、それでも真白が、何をされるかわからないということに怯え、それに必死で耐えてることがわかる。
声が、震えていた。
真白本人も震えているだろう。